芥川賞受賞作品まとめ(6)-第101~120回-1989~1998年(説明文付)

2019-03-24文学賞芥川賞

芥川賞受賞作品まとめ(6)-第101~120回-1989~1998年(説明文付)

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芥川賞全集でのまとめは以下もご覧ください。

 

第120回 1998年 下半期

平野啓一郎 「日蝕」
錬金術の秘蹟、金色に輝く両性具有者(アンドロギュノス)、崩れゆく中世キリスト教世界を貫く異界の光……。華麗な筆致と壮大な文学的探求で、芥川賞を当時最年少受賞した衝撃のデビュー作「日蝕」。明治三十年の奈良十津川村。蛇毒を逃れ、運命の女に魅入られた青年詩人の胡蝶の夢の如き一瞬を、典雅な文体で描く「一月物語」。閉塞する現代文学を揺るがした二作品を収録し、平成の文学的事件を刻む。

 

第119回 1998年 上半期

藤沢周 「ブエノスアイレス午前零時」
雪深いホテル。古いダンスホール…地方でくすぶる従業員カザマは、梅毒と噂される盲目の老嬢ミツコに出会う。ある夜、孤独な彼がミツコを誘い二人でタンゴを踊る時、ブエノスアイレスにも雪が降る。ベストセラーとなったリリカル・ハードボイルドな芥川賞受賞作。

 

花村萬月 「ゲルマニウムの夜」
人を殺し、育った修道院に舞い戻った青年・朧は、修道女を犯し、暴力の衝動に身を任せる。世紀末の虚無の中、「神の子」は暴走する。

 

第118回 1997年 下半期

なし

第117回 1997年 上半期

目取真俊 「水滴」
ある日、右足が腫れて水があふれ出た。夜な夜なそれを飲みにくるのは誰?──沖縄を舞台に過去と現在が交錯する、奇想天外な物語。

 

第116回 1996年 下半期

柳美里 「家族シネマ」
失われた家を求め、映画出演を決めた家族を描いた「家族シネマ」、同棲中の部屋を飛び出した登校拒否の過去を持つ女を描いた「真夏」、転校生といじめを題材にした「潮合い」―心に傷を負った人間が強く生きようとする姿を描き、家族が価値あるものかを現代に問う名作。芥川賞に輝く表題作含むベストセラー。

 

辻仁成 「海峡の光」
廃航せまる青函連絡船の客室係を辞め、函館で刑務所看守の職を得た私の前に、あいつは現れた。少年の日、優等生の仮面の下で、残酷に私を苦しめ続けたあいつが。傷害罪で銀行員の将来を棒にふった受刑者となって。そして今、監視する私と監視されるあいつは、船舶訓練の実習に出るところだ。光を食べて黒々とうねる、生命体のような海へ……。海峡に揺らめく人生の暗流。

 

第115回 1996年 上半期

川上弘美 「蛇を踏む」
ミドリ公園に行く途中の藪で、蛇を踏んでしまった。
蛇は柔らかく、踏んでも踏んでもきりがない感じだった。「踏まれたので仕方ありません」人間のかたちが現れ、人間の声がして、蛇は女になった。
部屋に戻ると、50歳くらいの見知らぬ女が座っている。「おかえり」と当たり前の声でいい、料理を作って待っていた。「あなた何ですか」という問いには、「あなたのお母さんよ」と言う……。“消える家族"と“縮む家族"の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描く「消える」。ほか「惜夜記」を収録。

 

第114回 1995年 下半期

又吉栄喜 「豚の報い」
突如スナックに闖入してきた豚の厄を払うため正吉と三人の女は島に向かった。芥川賞受賞の表題作と「背中の夾竹桃」を収録する。

 

第113回 1995年 上半期

保坂和志 「この人の閾」
「汚くしてるけどおいでよ、おいでよ」というので、およそ十年ぶりに会ったこの人は、すっかり「おばさん」の主婦になっていた。でも、家族が構成する「家庭」という空間の、言わば隙間みたいな場所にこの人はいて、そのままで、しっくりとこの人なのだった…。芥川賞を受賞した表題作をはじめ、木漏れ日にも似たタッチで「日常」の「深遠」へと誘う、おとなのための四つの物語―。

 

第112回 1994年 下半期

なし

第111回 1994年 上半期

笙野頼子 「タイムスリップ・コンビナート」
海芝浦に向かう「私」を待ち受けるのは浦島太郎、レプリカント、マグロの目玉…。たどり着いた先はオキナワか? 時間と空間はとめどなく歪み崩れていく。言葉が言葉を生み、現実と妄想が交錯する。哄笑とイメージの氾濫の中に、現代の、そして「私」の実相が浮び上がる。話題騒然の第111回芥川賞受賞作の他、二篇を収録。

 

室井光広 「おどるでく」
大学ノート7冊分の日記を見つけたのは去年の6月の終り、帰省先の生家の2階の隅でだった。日記は、日本語の内容がロシア文字で表音化されていた。ロシア字日記の“翻訳”から灸りだされる「おどるでく」の正体とは?忘却されたものたちの声なき声を描く表題作ほか、1篇を収録。

 

第110回 1993年 下半期

奥泉光 「石の来歴」
レイテで戦友から聞かされた言葉によって岩石に魅せられた男に訪れる苦難。夢と現が交錯する中で妻は狂気に誘われ、子は死に奔る。

 

第109回 1993年 上半期

吉目木晴彦 「寂寥郊野」
アルツハイマー病が愛を砂漠に変えた。国際結婚と老いの孤立を描く現代文学の秀作。

 

第108回 1992年 下半期

多和田葉子 「犬婿入り」
多摩川べりのありふれた町の学習塾は“キタナラ塾”の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。(講談社文庫)

 

第107回 1992年 上半期

藤原智美 「運転士」
時刻ヨーシ、方向切替ヨーシ、発車。電車はスピードを急速に上げ、間もなく軌道が緩やかに下り始め、徐々に傾斜がきつくなっていく。傾斜角1000分の35。都市と都市生活者の様々な貌(かお)をトンネルの闇と駅の輝きが妖しく繋ぐ。カミソリのように光る二本のレールの上に現代を官能的に描く。

 

第106回 1991年 下半期

松村栄子 「至高聖所 アバトーン」
ピュアで乾いた鉱物質の新構想大学に入学し、寮生活を始めた沙月とルームメイトの真穂。奇矯な行為を見せる真穂とは気持ちがすれちがうばかりであったが…。ギリシアのアスクレピオス神殿の最奥にあるという夢治療の場「至高聖所」を舞台にした真穂の戯曲。そこに込められた淋しさの慰撫の願い。涙には溶けない鉱物質の孤独が、もう一つの孤独へ寄り添う過程を見事に描くキャンパス小説。

 

第105回 1991年 上半期

荻野アンナ 「背負い水」
真っ赤な嘘というけれど。嘘に色があるならば、薔薇色の嘘をつきたいと思う──笑いがはじけ、才気が回転する、大型新人の話題作。

 

辺見庸 「自動起床装置」
彼は涼しい面立ちをした「起こし名人」だった……。通信社の仮眠室を舞台に、眠りから文明の危機を鋭く抉り出した芥川賞受賞作他一篇。「自動起床装置」「迷い旅」収録。

 

第104回 1990年 下半期

小川洋子 「妊娠カレンダー」
姉が妊娠した。つわりに苦しみ、家族に八つ当たりし、 母となる不安に苦しむ姉と接するうち、妹の心に芽生える不思議な感情。姉を苦しめるモノから姉を妹は守りたいという気持ちと裏腹に、妹はやがて、めまいのするような悪意の中へすべりこんで行く。出産を控えて苦しむ姉の傍らで、妹は鍋でジャムを混ぜる、その中には、ひそかな「毒」が。
家族の妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを、きらめく言葉で定着した芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」。
謎に包まれた寂しい学生寮の物語「ジミトリイ」、小学校の給食室に魅せられた男の告白「夕暮れの給食室と雨のプール」。透きとおった悪夢のようにあざやかな三編の小説。

 

第103回 1990年 上半期

辻原登 「村の名前」
中国の奥深くへ旅した日本人商社マンは、いつのまにか五千年の歴史をもつ「桃花源村」すなわち「桃源郷」に足を踏み入れていた……。芥川賞受賞作に「犬かけて」を併録。

 

第102回 1989年 下半期

瀧澤美恵子 「ネコババのいる町で」
わずか三歳でロスアンジェルスから一人、日本へ送られた恵里子は、実の母に捨てられたショックで失語症に陥る。家にいるのは気性のはっきりした叔母と口さがない祖母のふたり。隣家には「ネコババ」と祖母が呼ぶ女性。ネコババの家にはやさしいおじさんと「ネコバン」。行き場のない幼い少女の心をなぐさめるのはネコたち。生みの親が不在の家庭で、恵理子は人間のきずなというものを学んで成長していくが……。芥川賞受賞の表題作ほか二篇を収録。

 

大岡玲 「表層生活」
デビュー作、芥川賞受賞作、ヴェトナムでの戦場体験や阿片吸引をモチーフにした中期の傑作、病と闘いつつ死の直前に書き遺した絶筆―。開高健の創作の原点である珠玉の短篇十一篇を精選。

 

第101回 1989年 上半期

なし

 

過去の受賞作

過去の直木賞

過去の芥川賞

 

過去の新井賞



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Posted by 綾糸