芥川賞受賞作品まとめ(8)-第141~160回-2009~2018年(説明文付)

2019-03-25文学賞芥川賞

芥川賞受賞作品まとめ(8)-第141~160回-2009~2018年(説明文付)

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芥川賞全集でのまとめは以下もご覧ください。

 

第160回 2018年 下半期

上田岳弘 ニムロッド
仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。
中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。
小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。……
やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。「すべては取り換え可能であった」という答えを残して。

 

町屋良平 「1R(いちらうんど)1分34秒」
なんでおまえはボクシングやってんの?
デビュー戦を初回KOで飾ってから三敗一分。
当たったかもしれないパンチ、これをしておけば勝てたかもしれない練習。
考えすぎてばかりいる、21歳プロボクサーのぼくは、自分の弱さに、その人生に厭きていた……。長年のトレーナーにも見捨てられ、先輩の現役ボクサーで駆け出しトレーナーの変わり者、ウメキチとの練習の日々が、
ぼくを、その心身を、世界を変えていく――

 

第159回 2018年 上半期

高橋弘希 「送り火」
春休み、東京から山間の町に引っ越した中学3年生の少年・歩。
新しい中学校は、クラスの人数も少なく、来年には統合されてしまうのだ。
クラスの中心にいる晃は、花札を使って物事を決め、いつも負けてみんなのコーラを買ってくるのは稔の役割だ。転校を繰り返した歩は、この土地でも、場所に馴染み、学級に溶け込み、小さな集団に属することができた、と信じていた。
夏休み、歩は家族でねぶた祭りを見に行った。晃からは、河へ火を流す地元の習わしにも誘われる。
「河へ火を流す、急流の中を、集落の若衆が三艘の葦船を引いていく。葦船の帆柱には、火が灯されている」
しかし、晃との約束の場所にいたのは、数人のクラスメートと、見知らぬ作業着の男だった。やがて始まる、上級生からの伝統といういじめの遊戯。

 

第158回 2017年 下半期

石井遊佳 「百年泥」
私はチェンナイ生活三か月半にして、百年に一度の洪水に遭遇した。橋の下に逆巻く川の流れの泥から百年の記憶が蘇る! かつて綴られなかった手紙、眺められなかった風景、聴かれなかった歌。話されなかったことば、濡れなかった雨、ふれられなかった唇が、百年泥だ。流れゆくのは――あったかもしれない人生、群れみだれる人びと……

 

若竹千佐子 「おらおらでひとりいぐも」
24歳の秋、桃子さんは東京五輪のファンファーレに背中を押されるように故郷を離れ、身ひとつで上京。それから住みこみで働き、美男と出会って結婚し、彼の理想の女となるべく努め、都市近郊の住宅地で2児を産んで育て、15年前に夫に先立たれた。ひとり残された桃子さん、息子と娘とは疎遠だが、地球46億年の歴史に関するノートを作っては読み、万事に問いを立てて意味を探求するうちに、自身の内側に性別も年齢も不詳の大勢の声を聞くようになった。それらの声は桃子さんに賛否の主張をするだけでなく、時にジャズセッションよろしく議論までする始末。どれどれと桃子さんが内面を眺めてみれば、最古層から聞こえてくるのは捨てた故郷の方言だった。

 

第157回 2017年 上半期

沼田真佑 「影裏(えいり)」
大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。
北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、
ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。
ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。
いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、
「あの日」以後、触れることになるのだが……。樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。

 

第156回 2016年 下半期

山下澄人 「しんせかい」
十代の終わり、遠く見知らぬ土地での、痛切でかけがえのない経験――。19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗って北を目指す。辿り着いたその先は【谷】と呼ばれ、俳優や脚本家を目指す若者たちが自給自足の共同生活を営んでいた。苛酷な肉体労働、【先生】との軋轢、そして地元の女性と同期との間で揺れ動く思い。気鋭作家が自らの原点と初めて向き合い、記憶の痛みに貫かれながら綴った渾身作!

 

第155回 2016年 上半期

村田沙耶香 「コンビニ人間」
「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて…。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。

 

第154回 2015年 下半期

本谷有希子 「異類婚姻譚(いるいこんいんたん)」
専業主婦を主人公に、他人同士が一つになる「夫婦」という形式の魔力と違和を、軽妙なユーモアと毒を込めて描く表題作で芥川賞受賞!他に「藁の夫」など短編3篇を収録。子供もなく職にも就かず、安楽な結婚生活を送る専業主婦の私は、ある日、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気付く。「俺は家では何も考えたくない男だ。」と宣言する夫は大量の揚げものづくりに熱中し、いつの間にか夫婦の輪郭が混じりあって…。自由奔放な想像力で日常を異化する傑作短編集。

 

第154回 2015年 下半期

滝口悠生 「死んでいない者」
ある秋の日、大往生を遂げた男の通夜に親戚たちが集まった。子、孫、ひ孫三十人あまり。縁者同士の一夜の何気ないふるまいが、死と生をめぐる一人一人の思考と記憶を呼び起こし、重なり合う生の断片の中から、永遠の時間が現出する。「傑作」と評された第154回芥川賞受賞作に、単行本未収録作「夜曲」を加える。

 

第153回 2015年 上半期

又吉直樹 「火花」
売れない芸人の徳永は、熱海の花火大会で、先輩芸人である神谷と電撃的に出会い、「弟子にして下さい」と申し出た。神谷は天才肌でまた人間味が豊かな人物。「いいよ」という答えの条件は「俺の伝記を書く」こと。神谷も徳永に心を開き、2人は頻繁に会って、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。吉祥寺の街を歩きまわる2人はさまざまな人間と触れ合うのだったが、やがて2人の歩む道は異なっていく。徳永は少しずつ売れていき、神谷は少しずつ損なわれていくのだった。お笑いの世界の周辺で生きる女性たちや、芸人の世界の厳しさも描きながら、驚くべきストーリー展開を見せる。笑いとは何か、人間の本質とは何かを描ききり第153回芥川賞を受賞。

 

羽田圭介 「スクラップ・アンド・ビルド」
「早う死にたか」
毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、
ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。日々の筋トレ、転職活動。
肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。
閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!

 

第152回 2014年 下半期

小野正嗣 「九年前の祈り」
三十五になるさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。希敏の父、カナダ人のフレデリックは希敏が一歳になる頃、美しい顔立ちだけを息子に残し、母子の前から姿を消してしまったのだ。何かのスイッチが入ると大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった──。痛みと優しさに満ちた〈母と子〉の物語。 表題作他四作を収録。

 

第151回 2014年 上半期

柴崎友香 「春の庭」
東京・世田谷の取り壊し間近のアパートに住む太郎は、住人の女と知り合う。彼女は隣に建つ「水色の家」に、異様な関心を示していた。街に積み重なる時間の中で、彼らが見つけたものとは―第151回芥川賞に輝く表題作に、「糸」「見えない」「出かける準備」の三篇を加え、作家の揺るぎない才能を示した小説集。

 

第150回 2013年 下半期

小山田浩子 「穴」
仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ私は、暑い夏の日、見たこともない黒い獣を追って、土手に空いた胸の深さの穴に落ちた。甘いお香の匂いが漂う世羅さん、庭の水撒きに励む寡黙な義祖父に、義兄を名乗る見知らぬ男。出会う人々もどこか奇妙で、見慣れた日常は静かに異界の色を帯びる。芥川賞受賞の表題作に、農村の古民家で新生活を始めた友人夫婦との不思議な時を描く2編を収録。

 

第149回 2013年 上半期

藤野可織 「爪と目」
あるとき、母が死んだ。そして父は、あなたに再婚を申し出た。あなたはコンタクトレンズで目に傷をつくり訪れた眼科で父と出会ったのだ。わたしはあなたの目をこじあけて――三歳児の「わたし」が、父、喪った母、父の再婚相手をとりまく不穏な関係を語る。母はなぜ死に、継母はどういった運命を辿るのか……。独自の視点へのアプローチで、読み手を戦慄させる恐怖作(ホラー)。

 

第148回 2012年 下半期

黒田夏子 「abさんご」
文学史にのこる傑作二篇を一冊に!

横書き文から立ち昇る豊穣な世界。ベストセラーの芥川賞受賞作と鋭い批評眼、無常観と自然描写が光る源氏物語に比すべき長篇を収録。

 

第147回 2012年 上半期

鹿島田真希 「冥土めぐり」
子供の頃、家族で行った海に臨むホテル。そこは母親にとって、一族の栄華を象徴する特別な場所だった。今も過去を忘れようとしない残酷な母と弟から逃れ、太一と結婚した奈津子は、久々に思い出の地を訪ねてみる…。車椅子の夫とめぐる“失われた時”への旅を通して、家族の歴史を生き直す奈津子を描く。

 

第146回 2011年 下半期

田中慎弥 「共喰い」
一つ年上の幼馴染、千種と付き合う十七歳の遠馬は、父と父の女の琴子と暮らしていた。セックスのときに琴子を殴る父と自分は違うと自らに言い聞かせる遠馬だったが、やがて内から沸きあがる衝動に戸惑いつつも、次第にそれを抑えきれなくなって―。川辺の田舎町を舞台に起こる、逃げ場のない血と性の物語。大きな話題を呼んだ第146回芥川賞受賞作。文庫化にあたり瀬戸内寂聴氏との対談を収録。

 

円城塔 「道化師の蝶」
無活用ラテン語で書かれた小説『猫の下で読むに限る』で道化師と名指された実業家のエイブラムス氏。その作者である友幸友幸は、エイブラムス氏の潤沢な資金と人員を投入した追跡をよそに転居を繰り返し、現地の言葉で書かれた原稿を残してゆく。幾重にも織り上げられた言語をめぐる物語。

 

第145回 2011年 上半期

該当者なし

 

第144回 2010年 下半期

西村賢太 「苦役列車」
劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。解説・石原慎太郎。

 

朝吹真理子 「きことわ」
貴子(きこ)と永遠子(とわこ)。葉山の別荘で、同じ時間を過ごしたふたりの少女。最後に会ったのは、夏だった……。25年後、別荘の解体をきっかけに、ふたりは再会する。ときにかみ合い、ときに食い違う、思い出。境がゆらぐ現在、過去、夢。記憶は縺れ、時間は混ざり、言葉は解けていく――。やわらかな文章で紡がれる、曖昧で、しかし強かな世界のかたち。

 

第143回 2010年 上半期

赤染晶子 「乙女の密告」
京都の大学で、『アンネの日記』を教材にドイツ語を学ぶ乙女たち。日本式の努力と根性を愛するバッハマン教授のもと、スピーチコンテストに向け、「一九四四年四月九日、日曜日の夜」の暗記に励んでいる。ところがある日、教授と女学生の間に黒い噂が流れ…。(わたしは密告される。必ず密告される)―

 

第142回 2009年 下半期

該当者なし

 

第141回 2009年 上半期

磯崎憲一郎 「終の住処」
結婚すれば世の中のすべてが違って見えるかといえば、やはりそんなことはなかったのだ―。互いに二十代の長く続いた恋愛に敗れたあとで付き合いはじめ、三十を過ぎて結婚した男女。不安定で茫漠とした新婚生活を経て、あるときを境に十一年、妻は口を利かないままになる。遠く隔たったままの二人に歳月は容赦なく押し寄せた…。

 

過去の受賞作

過去の直木賞

過去の芥川賞

 

過去の新井賞



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Posted by 綾糸