はじめに
WordPressはシンプルでカスタマイズ性に優れたCMSとして世界中で広く使われています。しかし、その人気の高さゆえに攻撃者の標的にもなりがちです。
WordPressサイトを様々な脅威から確実に守る方法について、実践的な情報を詳しく解説していきます。適切なセキュリティ対策を施すことで、WordPressの利便性を最大限に生かしながら、安全で信頼性の高いサイト運営を実現できます。
サイト全体の保護策
WordPressサイトを包括的に保護するには、いくつかの有力な手段があります。
プラグインによる保護
WordPressには優れたセキュリティプラグインが多数存在し、サイト全体をパスワードで保護したり、不正アクセスを防止したりすることができます。代表的なプラグインとしては、「Password Protected」や「All In One WP Security & Firewall」が挙げられます。
プラグイン名 | 説明 | 主な機能 |
---|---|---|
Password Protected | WordPressサイト全体をパスワードで保護 |
|
All In One WP Security & Firewall | 包括的なセキュリティ対策を提供 |
|
Password Protected
無料のプラグインで、WordPressサイト全体をパスワードで保護することができるシンプルなプラグインです。
「設定」→「Password Protected」からさまざまな詳細設定が可能です。特に便利な機能として、特定のユーザーやIPアドレスをホワイトリストに登録できる点が挙げられます。
設定 | 項目 |
---|---|
パスワード保護の状況 | 「パスワード保護の状況」のトグルボタンをクリックして有効化 |
許可する権限 | パスワードなしで閲覧許可をする権限を設定します。「管理者を許可する」にはチェックを入れる |
新しいパスワード | パスワードを設定 |
許可するIPアドレス | パスワードなしでログインできるIPアドレスを設定可能 |
二度目以降は不要にする | 二度目以降は不要にするを有効化するとパスワード表示画面に「ログイン状態を保存する」というチェックボックスが表示され、✓する事で次回からはパスワードを要求されない |
許可を保持する日数 | 二度目以降は不要の場合何日間保存しておくかの設定 |
HTTPベーシック認証の活用
HTTPベーシック認証は、WordPressログインページやユーザー向けページの保護に効果的な手段です。この方法では、サーバーレベルでディレクトリやファイルへのアクセスを制限できます。ステージングサイトや社内サイトなど、限られたユーザーのみにアクセスを許可したい場合に適しています。
HTTPベーシック認証を設定する手順は以下の通りです。
- .htaccessファイルを作成し、保護したいディレクトリのパスを指定
- AuthTypeとAuthNameを設定し、認証の種類とリソース名を定義
- AuthUserFile でユーザー名とパスワードを指定
- Require指令を使ってアクセス制御を設定
この方法を利用すれば、WordPressサイトまたは特定のディレクトリにパスワードを設けて保護することができます。
投稿コンテンツの限定公開
WordPressには投稿コンテンツを限定公開する機能も備わっており、様々なニーズに対応できます。この章では、記事やコンテンツの限定公開に関する具体的な手順を解説します。
記事単位での限定公開
WordPressでは、投稿された個別の記事に対してパスワードを設定し、限定公開にすることができます。そのパスワードを入力しないとコンテンツを閲覧できなくなります。
また、「Passster – Password Protection」プラグインを使えば、記事の一部分のみを限定公開にすることも可能です。特定のパラグラフやセクションのみをパスワードで保護できるため、より柔軟な運用ができます。
会員制サイトの設定
WordPressには会員制サイトを構築するためのプラグインも存在します。代表的なものが「Simple Membership」で、会員登録フォームの作成やユーザー管理、有料会員コンテンツの作成などが可能になります。会費課金型のサービスを提供したい場合に便利です。
- 会員登録フォーム作成
- 会員ユーザーの管理
- コンテンツへのアクセス権限設定
- メンバーシップレベルの設定
- 課金システムの構築
会員制サイトを構築することで、プレミアムコンテンツの有料提供やサポートサービスの提供など、新しいビジネスモデルの可能性が広がります。
Simple Membershipの使い方は以下をご覧ください。
サイト全体の限定公開
「WP Maintenance Mode」プラグインを使えば、WordPressサイト全体を一時的に閉鎖し、特定のユーザーのみにアクセスを許可することができます。サイトをリニューアルする際などの作業時に、一般ユーザーからの閲覧を防ぐのに役立ちます。
プラグイン設定から、許可するIPアドレスやメールアドレスのリストを登録できます。また、サイトをメンテナンスモードにしている旨のお知らせ画面も表示させることができ、ユーザーへの情報提供も行えます。
WordPressの脆弱性とその対策
どんなにセキュリティ対策を施しても、WordPressの脆弱性そのものを見過ごしてはいけません。この章では、WordPressに存在する脆弱性の種類と、それらに対する適切な対策を詳しく解説します。
WordPressの脆弱性とリスク
WordPressの脆弱性は、プログラムの設計ミスが原因で発生します。プラグインやテーマに含まれるセキュリティホールから、不正アクセスやサイト改ざん、重要データの漏えいなどの被害が生じる可能性があります。
脆弱性への対策が遅れると、以下のようなリスクにさらされます。
- 管理画面への不正ログイン
- 投稿記事の改ざん・削除
- データベースの情報漏えい
- サイトの踏み台化による違法行為への加担
特にプラグインの脆弱性は注意が必要で、プラグインの多くは小規模な個人開発者によって作られており、十分なセキュリティ対策がなされていない可能性があります。
脆弱性に対する具体的な対策
WordPressの脆弱性から身を守るためには、以下の対策を怠らずに実施する必要があります。
- WordPressコアとプラグイン、テーマの定期的なアップデート
- 強力なパスワードの設定と二要素認証の導入
- 不要なプラグインの無効化と削除
- サイトの定期的なバックアップ
- ログの監視と不審な動きの確認
特に脆弱性が発見されたWordPressやプラグインのバージョンについては、すぐにアップデートを行う必要があります。さらに、WordPressのカスタムログイン URLを設定したり、ファイル編集を制限したりすることで、攻撃の手口をある程度防ぐこともできます。
SSL化によるサイト保護
近年、GoogleをはじめとするウェブサービスでSSL通信の重要性が強く叫ばれるようになってきました。この章では、WordPressサイトをSSL化する方法と、そのメリットについて詳しく解説します。
WordPressサイトのSSL化手順
WordPressサイトをSSL化するための基本的な手順は以下の通りです。
- SSL証明書を取得する(レンタルサーバーや認証局から)
- 取得したSSL証明書をサーバーに設置する
- WordPressサイトのURLをhttpsに変更する
- データベースの情報もhttpsに書き換える
4番目の手順は手作業で行うと大変ですが、「Really Simple SSL」プラグインを使えば、データベースの書き換えも自動で行ってくれます。SSLのインストールまでをサポートしてくれるレンタルサーバーも多いので、手順に従えばスムーズにSSL化できるでしょう。
SSL化のメリット
WordPressサイトをSSL化することで、以下のようなメリットが得られます。
- 通信の安全性が高まり、ユーザー情報の漏えいリスクが低減
- GoogleからのSEO評価が上がる
- 企業としての信頼性が高まる
- GDPRなどの法律への準拠が容易になる
SSL化は重要な対策の一つですが、そのままではセキュリティ上の問題が残されていることがあります。プラグインを使ってリソースの HTTP/HTTPS の置換を行うなど、セキュリティ対策を組み合わせることが大切です。
まとめ
本記事では、WordPressサイトを様々な脅威から守るための具体的な方法を、プラグインの活用からSSL化対策、会員制サイトの設定まで、様々な角度から検討してきました。プラグインを賢く組み合わせることでサイト全体を包括的に保護できますし、HttpBebasicック認証の利用やSSL化により、合理的なコストでセキュリティを強化できます。
一方で、WordPressに備わっている機能を使えば、会員制サイトを構築したり、投稿記事の一部分のみを限定公開したりと、柔軟な運用も可能です。こうした機能を活用することで、サイトの魅力を高め、新しいサービスを展開する土台を作れるかもしれません。
WordPressはパワフルな反面、脆弱性の問題も抱えています。本記事で紹介した対策を着実に実行し、定期的にログを監視するなどの対応を欠かさないことが、安全で信頼できるWordPressサイト運営の鍵となるでしょう。