鮎川哲也賞とは?第1回(1990年)~現在までの受賞作品のすべて

2019-08-28文学賞

鮎川哲也賞とは?第1回(1990年)~現在までの受賞作品のすべて

鮎川哲也賞とは

公募 発表:4月

主  催:東京創元社
対  象:創意と情熱溢れる鮮烈な未発表の長編推理小説
締め切り:10月31日

1988年、東京創元社が全13巻の書き下ろし推理小説シリーズ「鮎川哲也と十三の謎」を刊行する際、その最終巻を「十三番目の椅子」として一般公募した。翌年、その企画を発展する形で鮎川哲也賞が創設された。正賞はコナン・ドイル像、賞金は印税全額。受賞作は、毎年10月前後に東京創元社より刊行される。

贈呈式は毎年、飯田橋にあるホテルメトロポリタンエドモント〈悠久の間〉にて、ミステリーズ!新人賞と合同で行われる。

出典:ウィキペディア鮎川哲也賞(東京創元社)

 

鮎川 哲也
生年月日:1919年2月14日
活動期間:~2002年9月24日(83歳没)

 

受賞作品は東京創元社より刊行。その他、候補作品でも他社から刊行されたものは掲載しています。

第31回(2021年):172篇

2020年10月31日応募締め切り。

受賞作品:なし

 

第30回(2020年):158篇

刊行は2020年10月予定。

選考詳細は2020年10月刊行の「ミステリーズ!vol.103」にて。

千田理緒/誤認五色

千田理緒(せんだ りお)
1986年埼玉県生まれ。大阪府在住。大阪薫英女学院高等学校卒。現在はフリーター。

※刊行タイトル「五色の殺人者」

なぜ犯人の服の目撃証言は、
「赤」「緑」「白」「黒」「青」と五通りなのか
食い違う目撃証言、見つからない凶器の謎。
不可能犯罪の真相は、切れ味鋭いロジックで鮮やかに明かされる!
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優秀賞:弥生小夜子/風よ僕らの前髪を

弥生小夜子(やよい さよこ)
1972年神奈川県生まれ。東京都在住。白百合女子大学卒。現在は主婦。

弁護士の伯父が何者かに殺害された。犯人は未だ杳としない中、伯母は密かに養子の志史を疑っていた――伯母から志史の身辺調査を依頼された元探偵事務所員の若林悠紀にとって、志史は家庭教師として教えた子供の一人だった。誰にも心を許そうとしなかった志史の過去を調べるうちに、悠紀は愛憎が渦巻く異様な人間関係の深淵を覗き見ることになる。

 

第29回(2019年):152篇

方丈貴恵/時空旅行者の砂時計

方丈貴恵(ほうじょうきえ)

1984年兵庫県生まれ。京都大学卒。在学時は京都大学推理小説研究会に所属。現在フリーター。

瀕死の妻のために謎の声に従い、二〇一八年から一九六〇年にタイムトラベルした主人公・加茂。妻の先祖・竜泉家の人々が殺害され、後に起こった土砂崩れで一族のほとんどが亡くなった「死野の惨劇」の真相の解明が、彼女の命を救うことに繋がるという。タイムリミットは、土砂崩れがすべてを呑み込むまでの四日間。閉ざされた館の中で起こる不可能犯罪の真犯人を暴き、加茂は二〇一八年に戻ることができるのか!?“

 

第28回(2018年):157篇

川澄浩平/探偵は教室にいない

※「学校に行かない探偵」から改題

わたし、海砂真史には、ちょっと変わった幼馴染みがいる。幼稚園の頃から妙に大人びていて頭の切れる子供だった彼とは、別々の小学校に入って以来、長いこと会っていなかった。変わった子だと思っていたけど、中学生になってからは、どういう理由からか学校にもあまり行っていないらしい。しかし、ある日わたしの許に届いた差出人不明のラブレターをめぐって、わたしと彼―鳥飼歩は、九年ぶりに再会を果たす。日々のなかで出会うささやかな謎を通して、少年少女が新たな扉を開く瞬間を切り取った四つの物語。

 

第27回(2017年):141篇

今村昌弘/屍人荘の殺人
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け―。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった…!!究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!

 

優秀賞:一本木透/だから殺せなかった
「おれは首都圏連続殺人事件の真犯人だ」大手新聞社の社会部記者に宛てて届いた一通の手紙。そこには、首都圏全域を震撼させる無差別連続殺人に関して、犯人しか知り得ないであろう犯行の様子が詳述されていた。送り主は「ワクチン」と名乗ったうえで、記者に対して紙上での公開討論を要求する。「おれの殺人を言葉で止めてみろ」。連続殺人犯と記者の対話は、始まるや否や苛烈な報道の波に呑み込まれていく。果たして、絶対の自信を持つ犯人の目的は―

 

第26回(2016年):135篇

市川憂人/ジェリーフィッシュは凍らない
特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船“ジェリーフィッシュ”。その発明者である、ファイファー教授たち技術開発メンバー6人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところがその最中に、メンバーの1人が変死。さらに、試験機が雪山に不時着してしまう。脱出不可能という状況下、次々と犠牲者が…。

 

第25回(2015年):149篇

受賞作なし

 

第24回(2014年):141篇

内山純/Bハナブサへようこそ

※「ビリヤードハナブサへようこそ」と「Bハナブサへようこそ」があり。

変わった名前をもつ大学院生、中央。彼はちょっとレトロな撞球場「ビリヤードハナブサ」でアルバイトをしている。ビリヤードの腕前は一流、経営手腕は三流の英雄一郎先生が経営するこの店には、個性的な常連客たちが集う。おしゃべり好きな彼らは、仲間内の誰かが事件に巻き込まれると、プレーそっちのけで推理談議を始め、みな素人探偵となって謎を解こうとするのだ。けれど結局事件の真相を言い当てるのは、アルバイトの中央の役割で?! そして今日もまた不思議な事件が持ち込まれ――。

 

第23回(2013年):152篇

市川哲也/名探偵の証明

※「名探偵 The Detective」から改題

そのめざましい活躍から、1980年代には推理小説界に「新本格ブーム」までを招来した名探偵・屋敷啓次郎。行く先々で事件に遭遇するものの、驚異的な解決率を誇っていた――。しかし時は過ぎて現代、ヒーローは過去の事件で傷を負い、ひっそりと暮らしていた。そんな彼を、元相棒が訪ねてくる。資産家一家に届いた脅迫状をめぐって若き名探偵・蜜柑花子と対決から、屋敷を現役復帰させようとの目論見だった。人里離れた別荘で巻き起こる密室殺人、さらにその後の名探偵たちの姿を描いた長編ミステリ。

 

第22回(2012年):140篇

青崎有吾/体育館の殺人
風ヶ丘高校の旧体育館で、放送部部長の少年が何者かに刺殺された。放課直後で激しい雨が降り、現場は密室状態だった!? 早めに授業が終わり現場体育館にいた唯一の人物、女子卓球部の部長の犯行だと、警察は決めてかかるが……。死体発見現場にいあわせた卓球部員・柚乃は、嫌疑をかけられた部長のために、学内随一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。内緒で校内に暮らしているという、アニメオタクの駄目人間に――。しかしなぜ彼は校内に住んでいるのだろう?

図書館の殺人
2018/9/12
水族館の殺人
2016/7/28

 

第21回(2011年):140篇

山田彩人/眼鏡屋は消えた
部室で目覚めると、8年間の記憶が失われ高校時代に逆戻り。どうやら母校で教師をしているらしい。おまけに親友の実綺が高二の文化祭前に亡くなっているなんて!?二人で『眼鏡屋は消えた』を上演するべく奮闘していたのに。あたしは最も苦手としていた、イケメンの元同級生・戸川涼介とともに真相を探る決意をしたが…。

 

第20回(2010年):148篇

安萬純一/ボディ・メッセージ

※「ボディ・メタ」から改題

探偵二人にある家で一晩泊まってほしいという、簡単だが奇妙な依頼。指示された家に向かったスタンリーとケンウッドに家人は何も説明せず、二人は酒を飲んで寝てしまう。未明に大きな物音で目覚めた二人が目にしたのは、凄惨な殺人現場だった。罠なのか?警察を連れて現場に戻ると、死体が消失していた!?

 

月原渉/太陽が死んだ夜
ニュージーランドの全寮制女子校に、親友と共に編入してきたジュリアン。彼女は同校の卒業生である祖母が遺した手記と、古い手紙を携えていた。手記には教会堂で起こった殺人事件について、手紙には復讐をにおわせる不吉な一文が記されている―。教会堂での伝統行事の夜、ジュリアンと6人の女子生徒たちに悲劇が…。これはあの事件の再現なのか?新鋭が贈る本格ミステリ。

 

第19回(2009年):138篇

相沢沙呼/午前零時のサンドリヨン
ポチこと須川くんが、高校入学後に一目惚れしたクラスメイトの女の子。他人を寄せ付けない雰囲気を纏っている酉乃初は、実は凄腕のマジシャンだった。放課後にレストラン・バー『サンドリヨン』でマジックの腕を磨く彼女は、学校で起こった不思議な事件を、抜群のマジックテクニックを駆使して鮮やかに解決してみせる。それなのに、なぜか人間関係には臆病で、心を閉ざしがちな酉乃。はたして、須川くんは酉乃との距離を縮めることができるのか――。学園生活をセンシティブな筆致で活き活きと描いた、“ボーイ・ミーツ・ガール”ミステリ!

 

第18回(2008年):139篇

七河迦南/七つの海を照らす星
家庭では暮らせない子どもたちの施設・七海学園で起きる、不可思議な事件の数々。行き止まりの階段から夏の幻のように消えた新入生、少女が六人揃うと“七人目”が囁く暗闇のトンネル…子どもたちが遭遇した奇妙な事件を解明すべく、保育士の北沢春菜は日々奮闘する。過去と現在を繋ぐ六つの謎、そして全てを結ぶ七つ目の謎に隠された驚くべき真実。

 

候補作:彩坂美/ひぐらしふる
公衆の面前で突如として姿を消した親子連れ。山のてっぺんでUFOに連れ去られた幼馴染。実家に帰省した有馬千夏の身の回りで起こった不可思議な事件は、はたして怪現象なのか、故意の犯罪なのか。そして、彼女の前にたびたび現れる〝自分そっくりの幻〟の正体とは。予測不能、二重三重のどんでん返しが待ち受ける、ひと夏の青春ミステリー。

 

第17回(2007年):132篇

山口芳宏/雲上都市の大冒険

※「雲上都市の怪事件」から改題

“雲上の楽園”と称される四場浦鉱山の奥底の地下牢で、二十年後の復讐を高らかに宣言する怪人・座吾朗。そして二十年目の昭和二十七年、予告通りの殺人事件が発生する。現場に遺された座吾朗からのメッセージと、謎の血文字。堅牢な地下牢から座吾朗はどのように脱出したのか? 続発する殺人事件を解き明かすために、眉目秀麗で気障な荒城、近未来的な義手を持つ真野原、さらに弁護士の私・殿島が雲上都市に集う。独特なキャラクター造型と、驚愕の脱出トリックで贈る、新たな本格ミステリの息吹。

 

第16回(2006年):138篇

麻見和史/ヴェサリウスの柩
解剖実習中、遺体の腹部から摘出された一本のチューブ。その中には、研究室の園部教授を告発し、脅迫する謎の四行詩がおさめられていた。教授を慕う助手の千紗都は犯人を突き止めようと密かに調査を始めるが、嘲笑うかのように次々と不気味な出来事が起こる。園部の研究室を狙うのは誰か。やがて驚愕の真実が…。大学医学部の暗部に迫る医学ミステリ。

 

佳作:似鳥鶏/理由あって冬に出る
某市立高校の芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るらしい――。吹奏楽部は来る送別演奏会のための練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。かくなる上は幽霊など出ないことを立証するため、部長は部員の秋野麻衣とともに夜の芸術棟を見張ることを決意。しかし自分たちだけでは信憑性に欠ける、正しいことを証明するには第三者の立ち合いが必要だ。……かくして第三者として白羽の矢を立てられた葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた! にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは? 第16回鮎川哲也賞に佳作入選したコミカルなミステリ。

 

佳作:松下麻理緒/毒殺倶楽部
轢死した作家・柏原のデビュー作『毒殺倶楽部』。
それは、毒に魅了された5人の仲間が創作した話をまとめたものだった。
しかし、「毒殺倶楽部」が実在するという噂が広がり始め……。
第16回鮎川哲也賞佳作、待望の文庫化!

 

第15回(2005年):131篇

受賞作なし

 

佳作:日向旦/世紀末大バザール 六月の雪
大切なものを守るために、あなたなら何をしますか。1999年5月。本多巧は大阪へ向かった。偶然居合わせた二人組の悩みを解決した恩で、本多は仕事を紹介してもらう。何ができるか、と問われ「探偵だ」と答えたことから家出人を捜すことに。連れていかれた先は、増改築を繰り返した原色のモール。お目付け役に美少女(でもオカマ)がついたことで、俄然やる気を出す本多だが、開始早々奇妙な事件が二つも勃発!軽妙な語り口とユーモラスなキャラクターで贈る快作長編。

 

第14回(2004年):112篇

神津慶次朗/鬼に捧げる夜想曲

※「月夜が丘」から改題

―昭和二十一年三月十七日。乙文明は九州大分の沖合に浮かぶ満月島を目指して船中にあった。鬼角島の異名を持つこの孤島には、戦友神坂将吾がいる。明日は若き網元の当主たる将吾の祝言なのだ。輿入れするのは寺の住職三科光善の養女優子。祝言は午後七時に始まり、午前一時から山頂に建つ寺で浄めの儀式があるという。翌朝早く、神坂家に急を告げる和尚。駆けつけた乙文が境内の祈祷所で見たものは、惨たらしく朱に染まった花嫁花婿の姿であった…。―この事件に挑むのは、大分県警察部の兵堂善次郎警部補、そして名探偵藤枝孝之助。藤枝が指摘する驚愕のからくりとは?続発する怪死、更には十九年前の失踪事件をも包含する真相が暴かれるとき、満月島は震撼する。

 

岸田るり子/密室の鎮魂歌

※「屍の足りない密室」から改題

世界的に成功した、ある女流画家の個展会場で、『汝、レクイエムを聴け』という作品を見た女が、悲鳴をあげて失神した。失踪した自分の夫の居場所をこの画家が知っているにちがいない、というのが彼女の不可解な主張だった。しかし、画家と失踪した男に接点はなかった。五年前の失踪事件は謎に満ちていた。そして五年後の今、ふたたびその失踪事件の現場だった家で事件が起きる。今度は密室殺人事件。さらに密室殺人は続く。問題の絵に隠された驚くべき真実!

 

第13回(2003年):67篇

森谷明子/千年の黙 異本源氏物語

※「異本・源氏藤式部の書き侍りける物語」から改題

帝ご寵愛の猫、『源氏物語』幻の巻「輝く日の宮」──ふたつの消失事件に紫式部が挑む。平安の世に生きる女性たちを取り巻く謎とその解決を鮮烈に描いた絢爛たる王朝推理絵巻。

 

第12回(2002年):74篇

後藤均/写本室の迷宮

※「富井多恵夫」より改名、「スクリプトリウムの迷宮」より改題

大学教授にして推理作家の富井に託されたのは、著名な画家・星野が遺した手記だった。―終戦直後のドイツ。星野は迷い込んだ城館で催される推理ゲームに参加したが、現実に殺人事件が起きる!推理合戦の果てに到達した驚愕の解答とは?さらに手記には大いなる秘密が隠されているという。富井は全ての謎を解き、星野の挑戦を退けることが出来るのか?

 

候補作:江東うゆう/楽土を出づ

楽土を出づ

候補作:ほしおさなえ/ヘビイチゴ・サナトリウム
「みんな飛び下りて死んじゃった。なんでだろう?」中高一貫の女子高で、高三の生徒が屋上から墜落死した。先輩の死を不思議に思った海生は、友人の双葉と共に真相を探りはじめる。様々な噂が飛び交う中、国語教師も墜死した。小説家志望だった彼は、死んだ女生徒と小説を合作していたが、何故か死の直前に新人賞受賞を辞退していて…。すべてに一生懸命だった少女たちの物語。

第11回(2001年):73篇

門前典之/建築屍材

※「人を喰らう建物」から改題

解体されナンバリングされた挙句、消え去った三人の死体。不審な人影の追跡劇と、密室からの人間消失。配達された小指。コンクリートに残された足跡――名探偵・蜘蛛手が辿り着いた、猟奇殺人の恐るべき真相とは?

 

第10回(2000年):99篇

受賞作なし

 

第9回(1999年):83篇

飛鳥部勝則/殉教カテリナ車輪

※「阿部勝則」より改名

憑かれたように描き続け、やがて自殺を遂げた画家・東条寺桂。彼が遺した二枚の絵、《殉教》《車輪》に込められた主題とは何だったのか? 彼に興味を持って調べ始めた学芸員の前に現れたのは、二十年前の聖夜に起きた二重密室殺人の謎だった――緻密な構成に加え、図像学の導入という新鮮な着想が話題を呼ぶ

 

第8回(1998年):85篇

谺健二/未明の悪夢

※「児玉健二」より改名

1995年1月17日未明、神戸を未曾有の大震災が襲った。一瞬にして崩壊した街で、私立探偵の有希(ゆうき)真一は多くの死を目の当たりにする。ようやく彼が救出した友人の占い師探偵・雪御所(ゆきのごしょ)圭子も精神に異常を……。そんな最中、バラバラ死体の消失、磔(はりつけ)殺人と、連続猟奇殺人事件が発生する! 著者自らの体験も色濃い渾身の筆致

 

候補作:城平京/名探偵に薔薇を
怪文書『メルヘン小人地獄』がマスコミ各社に届いた。その創作童話ではハンナ、ニコラス、フローラが順々に殺される。やがて、メルヘンをなぞったように血祭りにあげられた死体が発見され、現場には「ハンナはつるそう」の文字が……。不敵な犯人に立ち向かう、名探偵の推理は如何に? 第八回鮎川哲也賞最終候補作、文庫オリジナル刊行。

候補作:柄刀一/3000年の密室
3000年前の殺人事件!?密室状態の洞窟で発見された縄文人男性のミイラは、背中に石斧を突きたてられ、右腕を切断されていた。―サイモンと命名された彼は、学界に新たな発見と論争をもたらすが…。今度はサイモンの発見者が行方をくらます事件が起きる!作家的想像力を無限に広げ、壮大な物語を紡いだ著者のデビュー作。本格推理の一到達点。

候補作:氷川透/密室は眠れないパズル
エレベーターの前で胸を刺された男は「常務に、いきなり刺された」と、犯人を名指しして絶命した。“殺人犯”は、エレベーターで無人の最上階へ向かうところを目撃される。電話は不通、扉も開かない。ビル内には犯人を含めて九人だけ。犯人はなぜ逃げようとせず、とどまっているのか―。やがて最上階のエレベーターは下降を始めた。そして扉が開く。そこには、背中を刺され、血まみれで息絶えた常務が倒れていた。―いったい誰が、いかなる方法で殺したのか。常務が犯人ではなかったのか。積み重ね、研ぎすました論理の果てに行く着くのは八人の中の一人。新鋭が読者に挑戦する正統派長編本格推理。

第7回(1997年):81篇

満坂太郎/海賊丸漂着異聞
時は幕末の動乱期。御蔵島にアメリカの商船が漂着した。島民はやむなく異人たちの上陸を許可するが、その処遇に島の上役らは頭を抱える。時同じくして島内で起きた事件の始末もあり、難題絶えぬ中、やがて各集団で怪死や失踪が相次ぐ…。事態の打開に腐心する若き指導者の前に現れたのは、かのジョン・万次郎だった。

 

候補作:門前典之/屍の命題
とある湖畔の別荘に集められた6人は、やがて全員が死体となって発見された。なぜか死亡時刻も死因もバラバラだった。「犯人」は何を意図していたのか。究極の「雪の山荘」ミステリついに刊行。

 

第6回(1996年):126篇

北森鴻/狂乱廿四孝
三世澤村田之助、江戸末期~明治初期に一世を風靡した歌舞伎の名女形。舞台の最中の怪我から脱疽となり結果として四肢を切断せざるを得なかった悲劇の名優である。明治3年、異彩の画家・河鍋狂斎の描いた幽霊画を発端とした連続殺人事件が、猿若町を震撼とさせる。幽霊画には歌舞伎界を揺るがす秘密が隠されているらしい――。滅び行く江戸風情とともに、その事件の顛末を戯作者見習いのお峯の目を通して丁寧に活写した、第6回鮎川哲也賞受賞作『狂乱廿四孝』。さらに、その後のお峯たちの姿を描いた未完の長編ミステリ『双蝶闇草子』を付す。

 

佳作:佐々木俊介/繭の夏
八年前に自殺した従姉が住んでいたアパートに越した姉弟が、天井裏で古びた人形を見つけた。人形が秘めていた告発とも読めるメッセージを追って過去への旅を始めた姉弟は、関係者の証言を集めるうちに、自殺とされていた二つの死に「犯罪」の証跡を見出す。第六回鮎川哲也賞佳作となった〈スリーピング・マーダー〉テーマの本格ミステリ。

 

佳作:村瀬継弥/藤田先生のミステリアスな一年
不思議な魔法で子供たちの心をつかんだ小学校教師の愛情あふれる教育法を、なだらかな筆致で描いたメルヘンの世界。大人になった六年一組の同窓生が知る、華麗なマジックの陰に隠された藤田先生の一年間の秘密とは?

 

第5回(1995年):125篇

愛川晶/化身 アヴァターラ

※「化身」から改題

平穏な生活を送っていた女子大生に送り付けられた写真。記憶の底になにやら蠢くものを感じたヒロインの身に、徐々に恐るべき災厄が降り懸かってくる。予断を許さぬ結末へと読者を誘う長編推理小説の秀作

 

候補作:矢口敦子/家族の行方
知り合いの編集者から霊能者と誤解された結果、ある少年の失踪調査をその母親から依頼された女性推理作家の「私」。気は進まないものの、なかば息子の勇起に引きずられるようにして、慣れない探偵活動に着手するが…やがて彼女が直面した恐るべき真実とは?そして少年は今どこにいるのか?安住の地を求めて彷徨う少年を通し、「家族」の意味を問い掛ける緊迫の心理ミステリ。

候補作:美唄清斗/由仁葉は或る日
文芸サークル内での盗作問題と恋の鞘当て。それがやがて殺人に発展し…。希有な才能が、今、華開く。

 

第4回(1994年):121篇

近藤史恵/凍える島
得意客ぐるみ慰安旅行としゃれこんだ喫茶店〈北斎屋〉の一行は、瀬戸内海の真ん中に浮かぶS島へ。かつて新興宗教の聖地だった島に、波瀾含みのメンバー構成の男女八人が降り立つ。退屈する間もなく起こった惨事にバカンス気分は霧消し、やがて第二の犠牲者が……。

 

候補作:貫井徳郎/慟哭
連続する幼女誘事件の捜査が難航し、窮地に立たされる捜査一課長。若手キャリアの課長を巡って警察内部に不協和音が生じ、マスコミは彼の私生活をすっぱ抜く。こうした状況にあって、事態は新しい局面を迎えるが……。人は耐えがたい悲しみに慟哭する――新興宗教や現代の家族愛を題材に内奥の痛切な叫びを描破した、鮮烈デビュー作。

 

第3回(1993年):104篇

加納朋子/ななつのこ
短大生の入江駒子は『ななつのこ』という本に出逢い、ファンレターを書こうと思い立つ。身辺を騒がせた〈スイカジュース事件〉をまじえて長い手紙を綴ったところ、事件の“解決編"ともいうべき返事が舞い込んだ! こうして始まった駒子と作家のやりとりが鮮やかにミステリを描き出す、フレッシュな連作長編。

 

第2回(1992年):90篇

石川真介/不連続線
吉本紀子の義母がカバン詰めの死体となって発見された!死の直前の義母・静枝の呟き、福井県秋津村役場からの葉書、静岡県浜松市で診察を受けた眼科医院…一見無関係な義母の言動をたどるうち、紀子は過去の忌まわしい事件と、ある男性の名を探りあてる。だが、彼には鉄壁のアリバイが!鮎川哲也が「一点の手ぬきのない作品」と評した傑作推理。

 

候補作:篠田真由美/琥珀の城の殺人
18世紀ヨーロッパ山中、雪に閉ざされた城館の密閉された書庫で当主の伯爵が死んでいた。遺体は礼拝堂に安置されるが、一瞬にして消失する。呪われた館に渦巻く近親憎悪が、次々と不可思議な惨劇を呼ぶ。クラシカルな舞台設定と科学的トリックの配合が絶妙。建築探偵シリーズで大人気の著者デビュー作。

 

第1回(1991年):71篇

芦辺拓/殺人喜劇の13人
京都にあるD**大学文芸サークルの一員となった十沼京一は、元医院を改装した古い洋館「泥濘荘」で、仲間とともに気ままに暮らしていた。だが、ある日メンバーの一人が館の望楼で縊死体となって発見される。それをきっかけに、次々と死に見舞われるサークル員たち。犯人はメンバーの一員か、それとも…?本格ミステリファン必読。

 

佳作:二階堂黎人/吸血の家
江戸時代から遊廓を営んでいた旧家にもたらされた殺人予告。かつて狂死した遊女の怨霊祓いの夜、果たして起きた二つの殺人事件。折しも乱舞する雪は、二十四年前の惨劇にも似て…。名探偵・二階堂蘭子が解きあかす「密室」そして「足跡なき殺人」の謎。美しき三姉妹を弄ぶ滅びの運命とは!?本格長編推理。

 

候補作:西澤保彦/仔羊たちの聖夜

※「聨殺」から改題

クリスマスイヴの夜、一人の女がマンション最上階から転落死した。偶然、現場に遭遇した匠と高瀬。状況は自殺だが結婚式を控えた彼女に動機はなかった。ならば殺人か?事件を調べる二人は五年前にも同じ場所での高校生の飛び降り自殺を知る。一年後、三たび事件が。今度は二人の親しい友人だった…。本格ミステリの醍醐味を味わえる傑作。

 

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Posted by 綾糸