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野間文芸賞・第1回(1941年)~現在までの受賞作品のすべて

文学賞
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野間文芸賞とは

発表:11月

主催:財団法人野間文化財団・講談社

講談社初代社長、野間清治の遺志により設立された財団法人野間文化財団が主催する文学賞。純文学の小説家・評論家に授与される。野間三賞のうちの一つ。

出典:ウィキペディア講談社

野間清治(講談社設立)
生年月日:1878年12月17日
1938年10月16日(59歳没)

「野間文芸新人賞」は以下をご覧ください。

野間文芸新人賞・第1回(1979年)~現在までの受賞作品のすべて
野間文芸新人賞とは 発表:11月 主催:財団法人野間文化財団・講談社 講談社初代社長、野間清治の遺志により設立された財団法人野間文化財団が主催する純文学の新人に与えられる文学賞である。野間三賞のうちの一つ。 新人作家による小説を対象とする。...

受賞作品のすべて

第76回:2023年
川上弘美/恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ

あ、また時間に捕まえられる、と思った。
捕まえられるままに、しておいた。

小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。
カリフォルニアのアパートメンツで子ども時代を過ごした友人たちは、
半世紀ほどの後、東京で再会した。
積み重なった時間、経験、恋の思い出。
それぞれの人生が、あらたに交わり、移ろっていく。

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第75回:2022年
松浦理英子/ヒカリ文集

二年前、東北で横死した劇作家兼演出家の破月悠高。妻の久代がその未完成の遺作を発見した。学生時代に夫妻も所属していた劇団NTRをモデルにしたその戯曲を読んだ久代は、同じく劇団員だった鷹野裕に声を掛ける。「裕、あの戯曲の続き書かない?」

相談の結果、元劇団員たちがそれぞれ好きな形式で文章を寄せることになった。作品集のタイトルは「ヒカリ文集」。劇団のマドンナであり、あるとき姿を消してしまった不思議な魅力を持った女性、賀集ヒカリの思い出が描かれてゆく。

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第74回:2021年
リービ英雄/天路

アメリカを捨て日本に移り住んだ作家は、故国に残した母の死を抱えて中国の最果て、チベット高原へと赴く。
一千年の祈りの地でたどる、死と再生の旅。

第73回:2020年
小川洋子/小箱

『ことり』以来7年ぶりの、書き下ろし長編小説。
死んだ子どもたちの魂は、小箱の中で成長している。死者が運んでくれる幸せ。
世の淵で、冥福を祈る「おくりびと」を静謐に愛おしく描く傑作。

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第72回:2019年
松浦寿輝/人外(にんがい)

神か、けだものか。アラカシの枝の股から滲みだし、四足獣のかたちをとった「それ」は、予知と記憶のあいだで引き裂かれながら、荒廃した世界の風景を横切ってゆく。死体を満載した列車、空虚な哄笑があふれるカジノ、書き割りのような街、ひとけのない病院、廃墟化した遊園地。ゆくてに待ち受けるのは、いったい何か?世界のへりをめぐるよるべない魂の旅を描く傑作小説。

第71回:2018年
橋本 治/草薙の剣

なんで僕はこんなところにいるんだろう? 日本人の心の百年を辿る壮大な長篇小説。62歳から12歳まで、10歳ずつ年の違う6人の男たちを主人公に、その父母や祖父母まで遡るそれぞれの人生を描いて、敗戦、高度経済成長、オイルショック、昭和の終焉、バブル崩壊、二つの大震災を生きた日本人の軌跡を辿る。戦後日本の行き着いた先である現代のありようを根底から問い直す、畢生の長篇小説。作家デビュー40周年記念作品。

第70回:2017年
髙村 薫/土の記

ラスト数瞬に茫然、愕然、絶叫! 現代人は無事、土に還れたのだろうか――。青葉アルコールと青葉アルデヒド、テルペン系化合物の混じった稲の匂いで鼻腔が膨らむ。一流メーカー勤務に見切をつけ妻の里に身を落着けた男は、今年の光合成の成果を測っていた。妻の不貞と死の謎、村人への違和感を飼い馴らす日々。その果てに、土になろうとした男を大異変が襲う。それでもこれを天命と呼ぶべきなのか……。

第69回:2016年
堀江敏幸/その姿の消し方
引き揚げられた木箱の夢想は千尋の底海の底蒼と闇の交わる蔀。…留学生時代、手に入れた古い絵はがき。消印は1938年、差出人の名はアンドレ・L。古ぼけた建物と四輪馬車を写す奇妙な写真の裏には、矩形に置かれた流麗な詩が書かれていた。いくつもの想像を掻き立てられ、私は再び彼地を訪れるが…。記憶と偶然が描き出す「詩人」の肖像。

第68回:2015年
長野まゆみ/冥途あり
川の流れる東京の下町で生まれた父は実直な文字職人として穏やかな生涯を送った―はずだった。死後、折々に亡き父の来し方を思う娘は、親族との会話を通して、父の意外な横顔に触れる。遠ざかる昭和の原風景の中に浮かび上がる敗戦の記憶。著者の実体験をもとにした家族の物語。

第67回:2014年
笙野頼子/未闘病記――膠原病、『混合性結合組織病』の
2013年2月、突然の高熱と激痛に襲われた作家は膠原病の一種、混合性結合組織病と診断される。不治、希少、専門医にも予測が難しいその病状…劇薬の副作用、周囲からの誤解、深まる孤立感。だが長年苦しんできたこの「持病」ゆえの、生き難さは創作の源だった。それと知らぬままに病と「同行二人」で生き、書き続けた半生をここに―。芥川賞作家のアラ還“教授”と15歳猫の静かな日常、猫は闘病中そして飼い主は難病と判明!!!あとがき「去年は満開の桜を静かに見ていた」書下ろし収録。

第66回:2013年
保坂和志/未明の闘争
やみくもに大切なものを抱きしめたり、ロッド・スチュワートが聴きたくなったり、眠ったり、子供の頃を思い出したり、セックスしたり、叫びたくなったり、何処か知らない所に行きたくなる、富士山と文学と音楽と猫と世界への愛にあふれた小説。

第65回:2012年
山田詠美/ジェントルマン
眉目秀麗、文武両道にして完璧な優しさを持つ青年、漱太郎。しかしある嵐の日、同級生の夢生はその悪魔のような本性を垣間見る―。天性のエゴイストの善悪も弁えぬ振る舞いに魅入られた夢生は、漱太郎の罪を知るただ一人の存在として、彼を愛し守り抜くと誓う。切なくも残酷な究極のピカレスク恋愛小説。

第64回:2011年
多和田葉子/雪の練習生
膝を痛め、サーカスの花形から事務職に転身し、やがて自伝を書き始めた「わたし」。どうしても誰かに見せたくなり、文芸誌編集長のオットセイに読ませるが…サーカスで女曲芸師と伝説の芸を成し遂げた娘の「トスカ」、その息子で動物園の人気者となった「クヌート」へと受け継がれる、生の哀しみときらめき。ホッキョクグマ三代の物語をユーモラスに描く、野間文芸賞受賞作。

第63回:2010年
村田喜代子/故郷のわが家
六十五年前に生まれた家を処分するため、故郷に戻ってきた笑子さん。彼女の胸にさまざまな想いが夢にうつつに去来する。家族もなく独りで世界中を旅しつづける男。いまは亡き密かな恐竜ファンだった兄さん。ガダルカナルへの遺骨収集団に参加する村の青年。人工羊水に浸るヤギの胎児―現代における故郷喪失を描く連作短篇集。

第62回:2009年
奥泉 光/神器 軍艦「橿原」殺人事件
昭和20年初頭、探偵小説好きの青年が上等水兵として、軽巡洋艦「橿原」に乗船した。そして艦底の倉庫でこれまで3人の変死事件があったことを知り、好奇心の蟲が騒ぎはじめる。「橿原」に隠された謎をめぐり憶測が飛交い、新たな変死事件は後を絶たず、艦内に不安が渦を巻き始める…。

第61回:2008年
町田 康/宿屋めぐり
「主よ。主よ。教えてください。俺は正しい航路を進んでいるのですか」主の命で大刀奉納の旅道中の鋤名彦名は、謎のくにゅくにゅの皮に飲み込まれ贋の世界へはまりこむ。真実を求めながらも嘘にまみれ、あらぬ濡れ衣の数々を着せられて凶状持ちとなった彦名。その壮絶な道中の果ては。

第60回:2007年
佐伯一麦/ノルゲ Norge
染色家の妻の留学に同行し、作家はノルウェーに一年間滞在した。光り輝く束の間の夏、暗雲垂れ込める太陽のない冬、歓喜とともに訪れる春。まっさらな心で出会った異郷の人々との触れ合いを縦糸に、北欧の四季、文学、芸術を横糸に、六年の歳月をかけて織り上げられた精神の恢復と再生のタペストリー。

第59回:2006年
黒井千次/一日 夢の柵
日常の内奥にひそむ光と闇。――人々が暮らしてゆく、生々しい奇妙な現実。生きることの本質と豊穣。著者60代半ばから70代半ばにかけて書かれた短篇群、野間文芸賞受賞の12の人生の断片。「夢の柵」「影の家」「眼」「浅いつきあい」「電車の中で」「隣家」「丸の内」「記録」「一日」「危うい日」「久介の歳」「要蔵の夜」収録。

第58回:2005年
村上 龍/半島を出よ
二〇一一年春、九人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した。さらに二時間後に、約五百名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。慌てる日本政府を尻目に、福岡に潜伏する若者たちが動き出す。国際的孤立を深める日本に起こった奇蹟!話題をさらったベストセラー、ついに文庫化。
第57回:2004年
辻井 喬/父の肖像

近江商人の末裔たる誇り高き田舎者にして大隈重信の末弟子、政治家らしからぬ政治家にして専横独裁の実業家、徹底した現実主義者にして時代の理想を追求し続ける者、私の父にして私の宿敵―。果して何者なのか?地縁と血の絆、修羅と栄光の狭間をひたすら生きたこの男は?この男の血を受けた運命から逃れきれないでいるこの私は?最大の「宿命」に挑む長篇小説。

第56回:2003年
竹西寛子/贈答のうた
詠み交わすうた 響き合うこころ。うたはあのようにも詠まれてきた。ひとはあのようにも心を用いて生きてきた。歴代の勅撰和歌集、私家集、さらに物語や日記文学の中で、華やかな独詠の陰に埋もれがちな贈答のうた。詠み交わす事で深化増幅する人の心と精妙に響き合う贈答歌に光をあて、自在な口語訳を付しつつ読み解く。王朝人の豊饒な言葉の贈り物への密やかな答歌とも評された名著。

第55回:2002年
高井有一/時の潮
今日、昭和が終った。
天皇崩御のニュースをきいて近くの御用邸に記帳に出かけた。昭和に生まれた私は、私の時代が終わってしまったような気がした。元新聞記者の私は、10歳年下の共同生活者、真子と葉山に暮らし、四季を楽しんでいる。しかし、さまざまに形をかえて潮だまりが出現するように、2人の間にわだかまりがないわけではない。戦時下に生まれ、戦後を生きる男と女を静かに描く野間文芸賞受賞作。

第54回:2001年
瀬戸内寂聴/場所
父の故郷「南山」、母の故郷「多々羅川」、夫と娘を捨てて出奔した「名古屋駅」、作家としての出発点であり、男との複雑な関係も始まった「三鷹下連雀」そして「西荻窪」「野方」、ついに長年の出家願望を成就させた「本郷壱岐坂」。父、母を育み、様々な波乱を経て一人の女流作家が生み出されていった土地を、八十歳にして改めて訪ね、過去を再構築した「私小説」。

第53回:2000年
林 京子/長い時間をかけた人間の経験
八月九日にすでに壊された「私」。死と共存する「私」は古希を目前にして遍路の旅に出る。「私」の半生とは一体何であったのか…。生の意味を問う表題作のほか、一九四五年七月世界最初の核実験が行なわれた場所・ニューメキシコ州トリニティ。グランド・ゼロの地点に立ち「人間の原点」を見た著者の苦渋に満ちた想いを刻す「トリニティからトリニティへ」を併録。

第52回:1999年
清岡卓行/マロニエの花が言った
両大戦間のパリに花開いた芸術家たちの青春のすべて。藤田嗣治・ユキ夫妻、岡鹿之助、シュルレアリスム詩人ロベール・デスノス、写真家マン・レイ、九鬼周造…優れた若き芸術家たちが集ったパリの豊かな時代。

第51回:1998年
津島佑子/火の山―山猿記
火の山――とは富士山のこと。その富士山に寄り添いながら生きた有森家の変遷史。誕生と死、愛と結婚の型。戦中戦後を生きた人たちを描きながら、日本の近代を見つめ直した傑作長編小説。第51回野間文芸賞、第34回谷崎潤一郎賞受賞作。平成18年4月から放送のNHK連続テレビ小説『純情きらり』の原案。

第50回:1997年
田久保英夫/木霊集
短編連作。現代人の孤立した魂はどこで癒されるか―。自然と交響しつつ生の原質をさぐる会心の7編。

富岡多惠子/ひべるにあ島紀行
ケルトの妖精が誘う西の果てアイルランド――幻想と現実が交錯して織りなす魂のタペストリー
『ガリヴァー旅行記』の作者スイフトが生涯抱きつづけた激しい怒り、そしてひとりの女性との「激しい友情」――冬の国(ヒベルニア)=アイルランドからナパアイ国へ、時空を超えてひとの関係のかたちを辿り、存在の哀しみをとらえる力作長編小説。

第49回:1996年
秋山 駿/信長
日本史上、もっとも非凡、もっとも独創的、もっとも不可解な男―信長。桶狭間から本能寺まで、従来の日本的な発想では理解出来なかった信長の行動を、プルターク『英雄伝』、スタンダール『ナポレオン』など、東西の古典を縦横に引いて明らかにしてゆく。並みいる世界の指導者と対比し、その比類なきスケールの「天才性」に迫る、前人未到の力業。野間文芸賞、毎日出版文化賞受賞作。

第48回:1995年

該当なし

第47回:1994年
阿川弘之/志賀直哉
なぜ、その小説を書く気になったのか。そのとき何を食べていたか。どこで書き、どのくらいの時間がかかったか……。評論は一切せず、作品と資料と踏査見聞とから、88年におよぶ生涯の詳細を調べ尽し、「事実」のみを積み重ねる。直哉を師と仰ぎ親炙した末弟子が、文字で描きあげた亡き先生の肖像画。上巻27章は、出生地・石巻の不思議から、青丹よし奈良の田舎住まいの賑わいまで。

李 恢成/百年の旅人たち
青森港に降り立ったのは老若男女とりまぜて二十人ばかりの朝鮮人だった。ついこの前まで日本人としてカラフトに暮した彼らが、今は日本への不法入国者として故国へ強制送還されようとしていた。敗戦の日本を縦断する押送列車の一つ車輛の中で、しかし彼らの思いは決して一つではなかった…。混乱の時代の体験を基に、人間の諸相を根源から見つめ尽す記念碑的大作。

第46回:1993年
日野啓三/台風の眼
鮮烈なイメージを喚起する新しい自伝の試み 幼少年期の赤坂、小中学生を過ごした植民地朝鮮、焼跡の大学、特派員として赴いたソウル、サイゴン。記憶に深く刻まれた情景を織り上げ、今も息づく過去を辿る。

第45回:1992年
坂上 弘/田園風景
日常の風景が抽象の世界へと転化される

貿易会社に勤める主人公の日常を東南アジアを舞台に描いた表題作「田園風景」、知り合いのアメリカ人夫婦の子供を預かる話「夏野」「向かいて聞く」、ほかに「コネティカットの女」「土手の秋」「寒桜」など9篇。明瞭な日常風景が、抽象世界へと転化し、人間の存在が、描かれる風景に同化し吸収されてゆく独得の世界を展く傑作短篇小説集。

第44回:1991年
河野多惠子/みいら採り猟奇譚
相良外科病院のひとり娘、比奈子は19歳で、38歳の内科医・尾高正隆と結婚した。昭和16年の初夏ふたりの生活が始まった。正隆は、今から少し遊ぼうと、比奈子に、真に生きることを教えはじめる。快楽死を至上の願望とするマゾヒストの彼は、妻をサディストに仕立てあげた…。グロテスクな現実と人間本来の躍動と日常生活のディテールの濃密な時空間に「快楽死」を描いた純文学。

第43回:1990年
佐々木基一/私のチェーホフ
「人間が生きていくことの、喜びとつらさとを、そしてまた、いかにささやかなものであれ、われわれの生をどこかで、支えている真実」と勇気とを教えられた、という著者が、チェーホフの心のそよぎや魂の息吹に耳を澄ませつつひたすら作品の読みに徹して胸にひびく感動の波紋を綴る。円熟した心境に達した著者最晩年の長篇文芸エッセイ。

第42回:1989年
井上 靖/孔子
二千五百年前、春秋末期の乱世に生きた孔子の人間像を描く歴史小説。『論語』に収められた孔子の詞はどのような背景を持って生れてきたのか。十四年にも亘る亡命・遊説の旅は、何を目的としていたのか。孔子と弟子たちが戦乱の中原を放浪する姿を、架空の弟子・えん薑が語る形で、独自の解釈を与えてゆく。現代にも通ずる「乱世を生きる知恵」を提示した最後の長編。

第41回:1988年
安岡章太郎/僕の昭和史
大正天皇崩御と御大葬の記憶で「僕」の昭和が始まった。成長期に浴びた戦前の空気、満州での軍隊体験、敗戦。貧困と病に苦しむなか書いた「ガラスの靴」で文壇に登場。やがて芥川賞受賞、結婚と「僕」の生活は安定しはじめる。六〇年安保自然成立後に旅立ったアメリカ南部への留学。帰国後に見た高度経済成長や学園紛争といった新たな変化。個人的実感に基づく把握と冷静な筆致で綴る稀有な同時代史。

第40回:1987年
森 敦/われ逝くもののごとく
太平洋戦争により崩れゆくサキ一家の変転の歳月と多くの庶民の、生きて死に逝く、“生死一如”の世界。かつての青春放浪の地、山形県庄内平野を舞台に人情味ある土地言葉を駆使しつつ、雄渾に物語る。生涯を賭けて深めた独自の仏教・東洋思想の視座から日本の風土と宗教を余すところなく描き尽した著者畢生の長篇大河小説。

第39回:1986年
大庭みな子/啼く鳥の
『三匹の蟹』で「群像新人賞」「芥川賞」両賞を受賞し、戦後日本文学史の中でも異例の衝撃的デビューをした大庭みな子の、作家活動20年の頂点を示す、深い人間理解と鋭い人生凝視の力作『啼く鳥の』。

上田三四二/島木赤彦
柿の村人は如何にして赤彦となり得たか。彼における信州の意味は何か。膨大な資料を駆使して、時代の中にアララギの歌人赤彦の全体像を刻んだ労作八百枚。大著『斎藤茂吉』に並ぶ著者の記念碑的な作家論。

第38回:1985年
島尾敏雄/魚雷艇学生
このままで果たして自分は戦闘に臨めるのか――。海軍予備学生として魚雷艇の訓練を受けながらも、実戦経験がないまま、第十八震洋特攻隊の指揮官として百八十余名の部下を率いる重責。勇壮な大義名分と裏腹に、ベニヤ板張りのモーターボートでしかない特攻艇を目にしたときの驚愕。特攻隊隊長として従軍した著者が、死を前提とする極限状態における葛藤を描く戦争文学の傑作。

丸谷才一/忠臣藏とは何か
なぜ忠臣藏は人気があるのか。『たった一人の反乱』の作者が、あのたった47人の反乱の謎を解明し、忠臣藏論のパラダイムを変革した、文芸評論の名作。

第37回:1984年

該当なし

第36回:1983年
丹羽文雄/蓮如
政変・争乱・飢餓に揺れる室町の世に、平安を求める庶民とともに生き、本願寺教団繁栄の礎を築いた中興の祖蓮如の生涯とその時代を描く丹羽文学の代表的歴史大作。蒙古襲来のころ誕生した新仏教親鸞の教義は、娘覚信尼、その孫の覚如にうけつがれていった。全8巻

第35回:1982年
小島信夫/別れる理由
姦通をテーマに“愛のカオス”を描いた大作
“第三の新人”を代表する作家・小島信夫が、文芸誌「群像」に1968年10月から1981年3月まで、全150回に亘って連載した“執念の大作”ともいえる全6巻の序章。
第1巻には第1~22話までを収録。幻想のごとき脆い夫婦関係を描いた名作『抱擁家族』から17年を経て、主人公は三輪俊介から前田永造と変貌したが、本作でも「姦通」をテーマに据えている。
夫婦の愛、男女の愛、人間の愛のカオスを複層的、かつエネルギッシュに描き、伝統的な小説の手法を根底から粉砕した文学世界が展開される。第38回日本芸術院賞、第35回野間文芸賞を受賞。

第34回:1981年
山本健吉/いのちとかたち
近代に至る文学や、花・茶・能などの伝統芸術を題材に日本美の淵源に分け入り、「いのち」と「かたち」を見定めようとする著者が展開する、日本人の自然観・芸術観・死生観を総合的にとらえた本格評論。

第33回:1980年
遠藤周作/侍
藩主の命によりローマ法王への親書を携えて、「侍」は海を渡った。野心的な宣教師ベラスコを案内人に、メキシコ、スペインと苦難の旅は続き、ローマでは、お役目達成のために受洗を迫られる。七年に及ぶ旅の果て、キリシタン禁制、鎖国となった故国へもどった「侍」を待っていたものは―。政治の渦に巻きこまれ、歴史の闇に消えていった男の“生”を通して、人生と信仰の意味を問う。

第32回:1979年
藤枝静男/悲しいだけ
緊張した透明度の高い硬質な文体。鋭角的に切り抉られた精神の軌跡。人間の底深い生の根源を鋭く問い続ける藤枝静男の名篇「欣求浄土」「一家団欒」を含む『欣求浄土』、藤枝文学の“極北”と称讃された感動の名作、野間文芸賞受賞の『悲しいだけ』を併録。

第31回:1978年
吉行淳之介/夕暮まで
自分の人生と“処女”の扱いに戸惑う22歳の杉子に対して、中年男の佐々の怖れと好奇心が揺れる。二人の奇妙な肉体関係を描き出す。

第30回:1977年
中島健蔵/回想の文学
回想の文学 1~5巻セット (全5巻)1977/5/25

第29回:1976年
武田泰淳/目まいのする散歩
近隣への散歩、ソ連での散歩…歩を進めるうち、現在と過去がひびきあい、新たな記憶がよみがえる。死を前にした清澄なひびきを持つ晩年の秀作。野間文芸賞受賞。改版に当たり、巻末特別エッセイ「丈夫な女房はありがたい」、野間文芸賞選評(抄)、百合子夫人の「受賞の言葉」を収録する。

三浦哲郎/拳銃と十五の短篇
うわべは優雅な村人であった亡父の形見の6連発拳銃。母の心臓に、雷に打たれたようにある6つの小さい深い穴。さりげない筆致と深く暖かな語りのうちに、生きることへの声援をおくる三浦哲郎の鮮やかな短篇連作の世界。

第28回:1975年
尾崎一雄/あの日この日
常に偽らざる自己を語って、変遷めまぐるしい今世紀を生きてきた一私小説家の文学私史的自伝。野間文芸賞受賞作。現代文学を側面から解き明す手掛りと発見にみちた書として評価も高い。本巻では、結婚前後の経緯、西鶴現代語訳の苦心、同人誌「小説」のことなどを録し、小林多喜二の志賀直哉訪問時期の真相を丹念に追究する。

平野 謙/さまざまな青春
鋭い分析力、秀抜な作品鑑賞力、戦後文学の理論的支柱となり、常に時代を背負い続けた批評家―平野謙。生涯のテーマ“芸術と実生活”“政治と文学”を、近代日本文学史にのぼせ、明治・大正・昭和にわたる作家論を展開、その歴史的変遷をたどる。「坪内逍遥・二葉亭四迷・森鴎外」「真山青果」「井上良雄」「伊藤整」ほか14篇。全集初収録以来、始めての単独刊行。

第27回:1974年
大岡昇平/中原中也
中原の不幸は果して人間という存在の根本的条件に根拠を持っているか。…人間は誰でも中原のように不幸にならなければならないものであるか。…深い友情から発した鋭い洞察力と徹底した実証的探究で、中原中也とは何か、文学とは何かに迫る第一級の評伝。野間文芸賞受賞の『中原中也』から、「中原中也伝―揺藍」「朝の歌」「在りし日の歌」を収録。

第26回:1973年
大江健三郎/洪水はわが魂に及び
鯨と樹木の代理人大木勇魚(いさな)と、現代のノアの洪水に船出する自由航海団。明日なき人類の怒りと畏れをまるごと描いた感動の巨編!

第25回:1972年
佐多稲子/樹影
被爆地長崎。敗戦後3年目の夏、華僑の女柳慶子と画家麻田晋は出遭った。原爆病に脅かされる2人はいたわり合い、自らの生を確かめるように愛し合い、10数年の苦痛の果てに死んで行った。著者の故郷長崎の、酷く理不尽な痛みを深い怒りと哀惜をこめて強靱に描く。原爆を告発した不朽の名作。

第24回:1971年
庄野潤三/絵合せ
グリム童話が不思議に交叉する丘の上の家。“姉がひとり、弟が二人とその両親”――嫁ぐ日間近な長女を囲み、毎夜、絵合せに興じる5人――日常の一齣一齣を、限りなく深い愛しみの心でつづる、野間文芸賞受賞の名作「絵合せ」。「丘の明り」「尺取虫」「小えびの群れ」など全10篇収録。

第23回:1970年
吉田健一/ヨオロッパの世紀末
ヨーロッパとは何か.我々は誤解を重ねてきたにすぎない――ヨーロッパがヨーロッパとしての性格を完成した十八世紀,堕落に転じた十九世紀,そして再生の季節としての世紀末を論じた本書は,その比類ない歴史感覚でそれまでのヨーロッパ観,世紀末観を根底から覆した。著者円熟期の最も薫りたかい果実である。

江藤 淳/漱石とその時代
日本の近代と対峙した明治の文人・夏目漱石。その根源的な内面を掘り起こし、深い洞察と豊かな描写力で決定的漱石像を確立した評伝の最高峰。

全5巻(Amazon)

第22回:1969年
中野重治/甲乙丙丁
64年春、日本統計資料社に勤める津田貞一に、出勤停止、アカハタ配布停止がもたらされる。貞一と、30年代からの交流のある、もう一人の主人公、党中央委員、田中榊は、嘗て参議院議員でもあり、作家でもある。合法、非合法、半合法、戦前・戦中・戦後を、時代の良心として、精一杯生きぬいた中野重治が、党および人との諸問題を、良心の底をもつき貫いて語った巨大な文学的記念碑。

第21回:1968年
河上徹太郎/吉田松陰
史実へ文学的想像力で迫る著者晩年の名作。 激動する時代の中で、閃光を放つように短い生涯を終えた松陰。その無類の誠実さに、武と儒という異質の原理が結合した精神の現れを読み解く。

第20回:1967年
舟橋聖一/好きな女の胸飾り

中村光夫/贋の偶像

第19回:1966年
井伏鱒二/黒い雨
一寸さきは地獄だぞ。焼け死ぬぞ。

一瞬の閃光に街は焼けくずれ、放射能の雨の中を人々はさまよい歩く……。罪なき広島市民が負った原爆の悲劇。その実相を精緻に描く名作。

第18回:1965年
永井龍男/一個その他
野間文芸賞、芸術院賞両賞受賞の短篇集『一個その他』から、世評高い作品集『カレンダーの余白』『青梅雨その他』『雀の卵その他』、そして川端賞受賞の『秋その他』に至る短篇の名手・永井龍男。その晩年の短篇集の中から、「一個」「蜜柑」「杉林そのほか」「冬の日」「青梅雨」「雀の卵」そして名品中の名品「秋」など14篇の短篇の冴えを集成。

第17回:1964年
中山義秀/咲庵
咲庵とは明智光秀の号である。戦略の才知に長けつつも、風雅の心もあわせ持った光秀。繊細さのなかに潜む天下への野心は、信長を本能寺で討ち果たす―。その欲望と懊悩を描いた義秀円熟の力作。野間文芸賞、日本芸術院賞受賞作。

高見 順/死の淵より
死を怯える詩、生死の深淵を凝視する詩、若き命にエールを送る詩、自らの生を肯定する詩―。激動の時代に大いなる足跡を残した“最後の文士”が、人生の最後に到達した、珠玉の詩群。時代を超えた人間の真実がここにある。

第16回:1963年
広津和郎/年月のあしおと
父柳浪のことから筆をおこし、五・一五、二・二六、太平洋戦争へと傾斜する暗鬱な時代を背景に、昭和初年前後から敗戦までの苦悩を生きた作家たちとの交流やX子とのことなど著者の辛い記憶を鮮やかに描く自伝的文壇回想記。85項上下2巻。上巻には「菊池寛の率直さ」「愛国心とニヒリズム」ほか47項までを収録。

第15回:1962年
尾崎一雄/まぼろしの記
父祖の地小田原下曽我で、病を克服し、自然と交流する日々。野間文芸賞受賞の名作「まぼろしの記」をはじめとする、尾崎一雄最晩年の代表的中短篇、「春の色」「退職の願い」「朝の焚火」「虫も樹も」「花ぐもり」「梅雨あけ」、さらに、「楠ノ木の箱」計8篇を収録。危うい“生”と理不尽な“死”を、透徹した静寂さの上に浮彫りにした深い感動を呼ぶ名篇。

第14回:1961年
井上 靖/淀どの日記
「茶々は眼をつぶった。父浅井長政が、母お市の方が、義父勝家が、伯父信長が、みんなそうしたように、彼女も亦白い刃先に眼を落としたまま、自分の前の短刀を執る時刻の来るのを待っていた。矢倉の窓からは、初夏の陽と青い空が見え、それ以外の何物も見えなかった。城を焼く余燼の煙が、時々、その青い空を水脈のように横に流れていた」―悲運の生涯を誇り高く生き抜いた秀吉の側室・淀どのを深く、詩情豊かに描いた傑作。

第13回:1960年
安岡章太郎/海辺の光景
不思議なほど父を嫌っていた母は、死の床で「おとうさん」とかすれかかる声で云った──。精神を病み、海辺の病院に一年前から入院している母を、信太郎は父と見舞う。医者や看護人の対応にとまどいながら、息詰まる病室で九日間を過ごす。戦後の窮乏生活における思い出と母の死を、虚無的な心象風景に重ね合わせ、戦後最高の文学的達成といわれる表題作ほか全七編の小説集。

大原富枝/婉という女
土佐藩執政、父・野中兼山(良継)の失脚後、四歳にして一族とともに幽囚の身となった婉。男子の係累が死に絶えた四十年後、赦免が訪れ、自由となったものの、そこで見たのは、再び政争の中で滅びてゆく愛する男の姿であった…。無慙な政治の中を哀しくも勁く生きた女を描き、野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞した名作「婉という女」に、関連作「正妻」「日陰の姉妹」の二篇を付し、完本とする。

第12回:1959年
室生犀星/かげろふの日記遺文
生母への想いを『蜻蛉日記』の書き手・紫苑の上や下賤の女・冴野に投影。「言語表現の妖魔」といわれた犀星の女性への思慕を描いた名篇。

第11回:1958年
小林秀雄/近代絵画
昭和28年50歳、ヨーロッパを巡って絵を見た。パリに始まり約半年―。モネ、セザンヌ、ドガ、ピカソ…彼ら、一流画家の一流の色に、とびきり一流の人間劇を見た。

小林秀雄の全作品を網羅し、計約730篇を発表年月順に配列した第6次小林秀雄全集。本文はすべて新字体・新かなづかい。全作品に、人名・書名・難語等を解説する脚注付き。第22巻は、昭和33年の作品を収録。

第10回:1957年
円地文子/女坂
明治初期、世に時めく地方官吏・白川行友の妻・倫(とも)は、良人(おっと)に妾を探すために上京した。妻妾を同居させ、小間使や長男の嫁にまで手を出す行友に、ひとことも文句を言わずじっと耐える倫。彼女はさらに息子や孫の不行跡の後始末に駈けまわらねばならなかった。
すべてを犠牲にして“家”という倫理に殉じ、真実の“愛”を知ることのなかった女の一生の悲劇と怨念を描く長編。

宇野千代/おはん
「人にもの問われても、ろくに返答もでけんような穏当な女」である主人公“おはん”は、夫の心がほかの女、芸妓“おかよ”に移ったとき、子供を身ごもったまま自分から実家に退いた。おはんとおかよ、二人の女に魅(ひ)かれる優柔不断な浅ましくも哀しい男の懺悔――。
頽廃的な恋愛心理を柔軟な感覚と特異な語り口で描き尽し、昭和文学の古典的名作とうたわれた著者の代表作。

第9回:1956年
外村 繁/筏

第8回:1955年

該当なし

第7回:1954年
川端康成/山の音
深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧みに描き出されている。戦後文学の最高峰に位する名作である。

第6回:1953年
丹羽文雄/蛇と鳩

第5回:1946年

小川未明

第4回:1944年

該当なし

第3回:1943年

幸田露伴

第2回:1942年

該当なし

第1回:1941年

真山青果

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