華々しく十八歳で歌壇に登場し、詩・小説・演劇・映画・エッセイと、あらゆる分野で活躍、劇団「天井棧敷」が海外で高く評価された寺山修司。かれはまた盗作疑惑やのぞき事件など、たえずスキャンダルを起こすトリックスターだった。デビュー時から身近に接した著者が、その虚と実を精緻に跡づけた傑作評伝。
雪深い東北の山奥で、主婦が野犬とおぼしき野獣に喰い殺されるという凄惨な事件が起きた。現場付近では、絶滅したはずのオオカミを目撃したという噂が流れる。果たして「犯人」は生きのびたニホンオオカミなのか?やがて、次次と血に飢えた謎の獣による犠牲者が…。愛妻を殺された動物学者・城島の必死の追跡が始まる。
太公望と並ぶ周王朝建国の功労者にして、孔子が夢にまで見たという至高の聖人に、著者独特の大胆な解釈で迫る。殷を滅ぼし、周を全盛に導いた周公旦の「礼」の力とは何か?果たして彼は政治家なのか、それともシャーマン?そして亡命先の蛮夷の国・楚での冒険行の謎とは。無類の面白さの中国古代小説。
「文藝春秋」「オール讀物」が永井龍男により復刊される敗戦直後から和田芳恵「一葉の日記」の完成を見た昭和三十一年までの十有余年。栄枯盛衰ただならぬ文壇と中間小説誌の発展期に重なる華やかな時代を舞台に生きた人々―筆一本に賭けた作家たちと編集者が織りなす哀歓の明け暮れを豊富な資料をもとに描いた、もう一つの戦後文壇史。
昭和二年七月二十四日未明、芥川龍之介は睡眠薬により、自らの死を選んだ……。しかし、致死量に至る睡眠薬の入手は、芥川の治療のために出された処方によれば困難である──主治医の日記、龍之介の書簡などから、自死の真相に迫る、渾身のノンフィクション。
最初の入門にしくじって、出戻りから、春風亭柳朝の落語家人生ははじまった。気っ風うが良くて喧嘩っ早い、そのうえ野暮が大嫌い。おまけに酒と博奕には目がなくて、女も好きの道楽三昧。しかし、落語のセンスは抜群で、やがて、立川談志・三遊亭円楽・古今亭志ん朝に並ぶ四天王の一角を担うようになったのだった…。粋を貫きとおした、これぞ江戸っ子芸人の破天荒な生涯を描く。
山岳会の新人山行として冬の八ヶ岳縦走に参加した加藤武郎。山岳会の常識にとらわれない彼の行動に、リーダーは戸惑い、怒りを覚えるが、その夜、猛吹雪がふたりを襲う–(白き嶺の男)。
『新編 単独行』から『単独行者(ルビ・アラインゲンガー)』に連なる不世出の登山家・加藤文太郎(1905年~1936年)の魂を継いで、南アルプスの渓谷や冬の北アルプス・滝谷、そしてヒマラヤの高峰を舞台に谷甲州が描く「もう一人の加藤の物語」。
山登りを愛し、絵筆を執り、文章をものし、音楽を楽しんだ“稀有の自由人”辻まこと。ダダイスト・辻潤と女性解放運動家・伊藤野枝との間に生まれ、波乱に満ちた人生を送った辻の足跡を追う魂の紀行。
“女流文壇の大御所”といわれた美しき作家・長谷川時雨。明治末期、歌舞伎界初の女性作家として華々しくデビュー。至福と修羅に揺れた、流行作家・三上於菟吉との生活。
西洋画の先駆者としての、高橋由一の一念が克つか、鬼県令・三島通庸の権勢に屈するか。―明治黎明期の二人の巨人の対決を描く雄渾の書下し長編。
赤穂浪士の討入から三百年、忠臣蔵の歴史に聳立する画期的な傑作が誕生した。公儀が赤穂藩に下した理不尽な処断に抗して、大石内蔵助は吉良上野介暗殺という非情のテロを決意する。塩相場の操作で資金を集め、謀略を駆使して吉良の喉元に迫る大石。藩主の実父を護るため、財力を傾け知嚢を絞ってこれを阻もうとする上杉家。武門の意気地にかけて死力を尽くす両者の暗闘は、ついに幕府権力をも脅かす。
動乱の昭和の原点は、明治の中でも日露戦争以後十年の時代に求められる。その歴史の転換点を小説家として生きたのが夏目漱石であった。漱石の義理の孫にあたる歴史研究家の著者が、知られざるエピソードを発掘しながら、文豪の生きた時代と、文明批評家としての彼の側面を、ユーモラスな語り口で綴った新田次郎文学賞受賞作。
空襲・大地震・大洪水・旱魃とあらゆる災害に見舞われた昭和20年代の福井を舞台に、復興に立ち上がる市民たちの姿を背景として、九頭竜川に鮎漁師として生きる愛子の青春を描く文芸大作。
北に生きる坑夫達にみる人間の原質―。共済組織「友子」に寄せる愛惜をあふれる郷愁とともに描く会心のライフワーク。
夏王桀に妹嬉をささげることで有〓@61F4氏の危機を救った伊尹は、桀のライバルとして台頭してきた商の湯王から三顧の礼を受け、湯王の臣となる。伊尹の狙いは夏と商の和親だったが、時代の流れはこれを許さず、ついに夏と商は激突し夏王朝は滅亡する。湯王は商王朝を開くが、伊尹の仕事はまだ終りではなかった。
文化元年、幕府は対露政策の一環として蝦夷地に官寺建立を決定。命を受けた文翁、智弁らは、アイヌ教化のためにアッケシに赴任した。文翁の布教は困難を窮め、若い智弁はアイヌを虐待する和人に慣りを募らせていく、やがて、文翁は幕命を果せぬまま横死、智弁は苛烈な運命に呑まれてゆく。
勅使河原蒼風、小原豊雲、安達潮花、そして孤高の天才・中川幸夫…。戦後の復興のなかで、家元を頂点として巨大な権力構造を形成し熾烈な争いを繰り広げた華道界。美しき花の背後にうごめく人間の欲望と野心を描ききった長編小説。
ラストエンペラー、満州国皇帝溥儀の妻の凄絶な生涯。フランス租界に育ち西洋文化を身につけた少女が、清朝最後の廃帝に嫁いだことで経験する数奇な運命。宮廷での退廃と無益な日々。満州国成立によって皇后になるが、日本敗戦、そして満州国崩壊。戦争と革命の時代、男たちの権力に抗いながら悲劇的な結末をむかえた女性の一生を綿密な調査と独自の視点で描くノンフィクションノベルの傑作!
一匹の柴犬を"もうひとりの家族"として惜しみなく愛をそそいだ感動の愛犬記。後日談と可愛い写真もさらにふえ、"ハラス"は甦える
ホンダにはレースの夢に憑かれた男たちが集まっていた―。モータースポーツの頂点、F1グランプリ。日本のホンダがF1に参戦して二十余年、遂にワールド・チャンピオンとなって世界を極めた。A・セナやA・プロスト、ウィリアムズやマクラーレン・チームと共に闘ってきた男達の光芒の軌跡。
敵中突破のため、必死の斬込みをかける日本兵。故郷の田野を守るべくゲリラとなった山岳民族。実兄を北ルソンの戦いに喪った著者が、悲惨な比島戦を彼我両面から描き出す!
徳川幕府の崩壊は、薩長の武力のみにあらず、もう一つの大きな要因は通貨の流出にあった。ペリーの来航以来日本は、初めて世界経済の荒波に見舞われた。幕府の経済的な無知につけ込んで、一儲けを企む米外交官ハリス、駐日英国代表オールコックたちの姿を赤裸々に描く
陸軍大将今村均はラバウルで敗戦を迎えた。やがて始まる軍事法廷で次々と裁かれる将兵たち。不充分な審議のまま戦犯として処刑されてゆく部下たちの姿を目のあたりにした今村は自らの意志で苛酷な状況の戦犯収容所に入り、やがて自身も戦犯として服役生活を送る。一人の軍人の姿を描くことで戦争と人間の真実を問うた名作。
「戦艦大和」には、3000人を超える乗組員が搭乗していた。多くが10代、20代の若者であった。愛する人を家族を祖国を守るために、彼らは、海に散った…。今、日本人が語り伝えなければならない、愛と涙の物語。
強打をうたわれた元東洋ミドル級王者カシアス内藤。当時駆けだしのルポライターだった“私”は、彼の選手生命の無残な終りを見た。その彼が、四年ぶりに再起する。再び栄光を夢みる元チャンピオン、手を貸す老トレーナー、見守る若きカメラマン、そしてプロモーターとして関わる“私”。一度は挫折した悲運のボクサーのカムバックに、男たちは夢を託し、人生を賭けた。
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