集英社出版四賞「すばる文学賞」とは?受賞作品のすべて

すばる文学賞とは
公募 発表:9月
主 催:集英社
対 象:純文学・短編
発 表:9月に決定
文芸誌『すばる』11月号に掲載
翌年2月頃 単行本刊行
小説すばる新人賞、柴田錬三郎賞、すばる文学賞、開高健ノンフィクション賞
第45回(2021年)
2022年 刊行予定。
永井みみ 1965年神奈川県生まれ。
一人暮らしの安田カケイは、訪問介護やデイ・サービスのケアを受けて暮らしている。認知症の症状があり、近年の記憶が曖昧なカケイ。ある日、一人の介護スタッフが「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と彼女に尋ねる。
かつてカケイは洋裁を生業にしていた。出奔した夫の連れ子とのあいだに、道子という女の子が生まれる。しかしカケイが夢中になってミシンを踏んでいるうちに、道子は金魚鉢から掬った水を飲み、その日のうちに疫痢で死んでしまった。
辛いことも多かったが、カケイは道子に会えた自分の人生は幸せだったと感じる。玄関で倒れたカケイは上がり框の裏に小さな手あとを見つけ、自分の手をそっと重ねる。そして今日が自分の死ぬ日だと思う。
石田夏穂(いしだ かほ)1991年東京都生まれ。
U野は、筋トレに励む会社員である。
Gジムに通うU野は、Nジムを新しく始めるO島から、ボディ・ビル大会への出場を勧められる。U野は迷うが、Nジムへの入会と、大会出場を決意する。
大会で好成績を残すため、U野は本格的に身体を鍛え始める。身体づくりの他にも、様々な準備に奔走する。ボディ・ビルの大会と言えど、舞台では女性らしい所作が求められることに、U野は徐々に葛藤を覚える。
大会当日、一位選手のドーピング違反により、U野は繰り上げで予選突破を果たす。しかし、移り気な審査基準に翻弄されたU野は、決勝の舞台で、女性らしさを無視した演技をする。
大会後、U野はGジムに戻るが、世間の価値観に囚われない態度を身につけている。
第44回(2020年)
木崎みつ子(きざき みつこ)
1990年 大阪生まれ。
二度も手首を切った父、我が子の誕生日に家を出て行った母。 小学生のせれなは、独り、あまりに過酷な現実を生きている。 寄る辺ない絶望のなか、忘れもしない1993年9月2日未明、彼女の人生に舞い降りたのは、伝説のロックスター・リアン。 その美しい人は、せれなの生きる理由のすべてとなって…… Amazonで探す 楽天で探す |
第43回(2019年)
高瀬隼子(たかせ・じゅんこ)
1988年(昭和63年) 愛媛県生まれ
付き合い始めの郁也に、そのうちセックスしなくなると宣言した薫。もともと好きではなかったその行為は、卵巣の病気を患ってからますます嫌になっている。そんな薫に郁也は「好きだから大丈夫」といい、セックスをしない関係でいる。ある日、郁也に呼び出されてコーヒーショップに赴くと、彼の隣にはミナシロと名乗る見知らぬ女性が座っていた。郁也の大学の同級生で、彼がお金を払ってセックスした相手だという。ミナシロは妊娠していて、子どもをもらってくれないかと彼女から提案されるのだが…。 Amazonで探す 楽天で探す |
第42回(2018年)/1355篇
須賀ケイ(すが・けい)
1990年京都生まれ、京都在住。龍谷大学社会学部卒。
硝子職人の父はいつの間にか「箕島家」からとり除かれてしまった。笑顔が増えた母、家には寄り付かない姉の鏡子と祐子、ときどき現れる「ミシマ」さんという男性。純子だけが母の視線を受けながらずっと家にいる。あるときから純子は父の「コンセキ」を辿り始め…。
第41回(2017年)/1366篇
山岡 ミヤ(やまおか みや)
1985年神奈川県生まれ。法政大学社会学部卒業。2007年、「魚は水の中」で第24回織田作之助賞〈青春賞〉佳作。
工場しかない閉じられた町で出会った実以子とカムト。職場と自宅を往復する日々、家では母親が実以子の存在を追いつめる。不穏な日常をふりきり、実以子とカムトが求めた光点とは。行き場のない若者たち、抑圧の先に生まれた奇妙な自足、そして焦りを描く物語。
兎束まいこ(うづか・まいこ)
1983(昭和58)年生まれ。岐阜県在住。
第40回(2016年)/1437篇
春見朔子(はるみ・さくこ)
1983年北海道県生まれ。北海道札幌市在住。
千景とまゆ子。高校の同級生である二人は十年ぶりに再会し、思いがけず一緒に暮らすことになる。薬剤師の千景は、定年退職した大学の「先生」の元を訪れては、ともに線虫の観察をする日々。スナック勤めのまゆ子は、突然訪ねてきた「先生」の孫と、カタツムリの飼育を巡り、交流を深めてゆく。そんな中、高校時代の友人の結婚式が近づき、二人はかつての自分たちの「深い関係」と「秘密」とに改めて向き合うことになる。そして…?「生」と「性」のままならなさを印象的にすくい上げるデビュー作。
ふくだももこ
1991(平成3)年8月4日 大阪府生まれ。東京在住。
第39回(2015年)/1283篇
黒名ひろみ(くろな・ひろみ)
1968年、香川県生まれ。同県在住。武庫川女子大学短期大学部卒業。 脚本家を目指し10年間シナリオの勉強を続けた後、地元の小説教室に通う。
美しい母親と姉のもとで育ち、容姿コンプレックスを抱えて美容整形を繰り返す27歳の絵里。大きな二重の目、高い鼻、脱色した髪と青いカラーコンタクトで、外国人のふりをして田舎の温泉宿に泊まるのが趣味の彼女は、ある日、向かった旅館で、「影」と呼ばれる嫌味ったらしい中年男性客と出会い―。
竹林美佳(たけばやし みか)
1983年(昭和58)年4月22日 神奈川県生まれ。東京都江戸川区在住
第38回(2014年)/1413篇
足立陽(あだち よう)
1978年、大阪府生まれ。京都大学総合人間学部卒業、同大学院退学。
行こう!行こうよ島へ!人類学者の河鍋未來夫らヌーディスト一行は、「あの島」を目指し、大海原へ挑む。そこでは人類史に新たなる一ページを刻むべく、禁断の計画が行われていた。ヒトとボノボ、属を超えた愛の先にあるものは…。
上村亮平(かみむら りょうへい)
1978年大阪府生まれ。関西大学文学部卒業。
七歳の誕生日、二人で出かけた船旅の途中で忽然と姿を消した父。その直前に甲板で父と遊んだゲームに登場する男「サイモン」。湖のある小さな町で暮らす伯父に引き取られたぼくは、二十代最後の年、サイモンにそっくりの人物と遭遇する。彼は、ぼくと父しか知らないはずの言葉を口にして―。時間と空間を自在に交差させながら、喪失の果ての光を繊細に描き出す新しい才能の誕生。
第37回(2013年)/1433篇
奥田亜希子(おくだ あきこ)
1983年愛知県生まれ。愛知大学文学部哲学科卒業。
唯一の理解者だった小学校の同級生・吉住君を想いながら、孤独を抱えて生きる26歳の早季子。他人に恋愛感情が持てず、刹那的な関係を繰り返していたある日、吉住君と自分と同じ癖を持つ宮内の存在を知り、会いたいと思うが、彼はアイドルのファン活動で忙しいという。彼と話すため、地方ライブに同行することにした早季子だったが…。奇妙で愛しい出会いの物語。
金城孝祐(かねしろ こうすけ)
1985年、神奈川県生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。
薬学部の学生・久野は、育毛と油脂の関連を研究する江藤教授に助手を任命され、かつての教え子である永田を紹介される。頭髪の薄い永田は乾性油によって人を魅了する光り輝く艶を頭部に作り出すことができた。久野は、永田の勤め先の塾で不思議な力を持つ女子中学生の荻と出会う…。
第36回(2012年)/1420篇
新庄耕(しんじょう こう)
1983年京都府生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。
学歴も経験も関係ない。すべての評価はどれだけ家を売ったかだけ。大学を卒業して松尾が入社したのは不動産会社。そこは、きついノルマとプレッシャー、過酷な歩合給、挨拶がわりの暴力が日常の世界だった…。物件案内のアポも取れず、当然家なんかちっとも売れない。ついに上司に「辞めてしまえ」と通告される。松尾の葛藤する姿が共感を呼んだ話題の青春小説。
高橋陽子(たかはし ようこ)
1965年、東京都生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。イラストレーター。
お寺の閻魔様が動き回り、池の蓮の花からお釈迦様が現れる。不思議なことがおこる町に引っ越してきた青奈夫婦。ある日、質屋で手に入れたオパールの指輪がしゃべり出し…。不思議な町の平凡な日常を描く、新しい大人のファンタジー。
第35回(2011年)/1354篇
澤西祐典(さわにし ゆうてん または さわにしゆうすけ)
1986年兵庫県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程在学中。
19世紀末のベルギー。農夫のアダン氏は、ある日突然「妻がフラミンゴになる」という不条理に陥る。忌み物扱いされるのを避けるため村人の目に触れぬようひた隠しにするが、幼い息子の発言で村中に知れわたってしまう。しかし、司祭の口から驚きの事実が告げられ…。極限状況での人間心理を暴く。
第34回(2010年)/1441篇
米田夕歌里(よねだ ゆかり)
1980年千葉県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。
イベント事務所で働くサトミのまわりで、異変が起きはじめていた。次々とひとやものが消えていき、最初から「なかった」ことになっていく。机のなかのハッカ飴、採用されたアルバイト、進めていたプロジェクト…。そんな時、同僚の久坂さんが、原因は自分にあると語りだす。彼もまた、失われ続ける世界のなかで、傷つきながら生きていた。
第33回(2009年)/1686篇
木村友祐(きむら ゆうすけ)
1970年、青森県八戸市生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。
25歳の亮介は、ファッション・デザイナーを目指しながらも、実家の農業を手伝うかたわら、「親方」の元でツリーハウス作りに精を出す毎日。地元コミュニティで人気者の兄・慎平の帰郷がきっかけとなり、つかの間の均衡が崩れはじめる…。
温 又柔(おん ゆうじゅう、Wen Yourou)
1980年5月14日生まれ。台湾籍の日本の小説家。
第32回(2008年)/2029篇
天埜裕文(あまの ひろふみ)
1986年4月9日千葉県柏市生まれ。小学校2年生より不登校に。フリースクール、通信制高校を経て、美容専門学校に入学するも、半年で卒業というところで自主退学。
僕ね、母親を殺したんですよ、包丁で、すごい先の尖ったやつでもしもし?聞こえますか?三円でそのパンを分けてもらえませんか?死んでるの?どこですか、そのテント小屋ってありがとうございますねぇ?殺してみてどう?ねぇ、どうなの?違う、誤解してる、違うんだあの、アクロス・ザ・ユニバースできますか?もしもし?聞こえますか?ねぇ、君は生まれてきたいのかな?生きていたいんでしょ?僕を殺そうとするのは僕だけだ。22歳、驚くべき才能の出現。
花巻 かおり(はなまき かおり)
1979年(昭和54年)3月8日生まれ。静岡県焼津市在住。
第31回(2007年)/1961篇
墨谷渉(すみたに わたる)
1972年、愛知県生まれ。中部大学国際関係学部国際文化学科卒業。
パワー系個人クラブ・リカの世界へようこそ
180cmを超える大柄で筋トレで鍛えあげた肉体を持つリカは、風俗ではなくSMでもない個人サロンを開設する。そこには様々な形で快楽を求める男達が訪れる。性を媒介しない風俗を描く秀作。
原田ひ香(はらだ ひか)
1970年神奈川県生まれ。大妻女子大学文学部卒業。
4人の過剰な女たち。あなたは誰に共感? 努力で「できちゃった略奪婚」した里美。その結果、離婚の憂き目にあった佐智子。そんな彼女を心配し、探偵活動を始める伯母ミツエ。その娘で不妊に悩む奈都子。女たちは対立しながら奇妙な友情を育む。
第30回(2006年)/1944篇
瀬戸良枝(せと よしえ)
1978年、石川県生まれ。近畿大学大学院文芸学研究科修士課程修了。
理想の男との“奇跡のセックス”の後、待っていたのは…。奴を忘れるために、中川は肉体を鍛えはじめた。きれいごとばかりの恋愛小説に飽きた人へおくる妄執まみれの失恋克服記。
吉原清隆 (よしはら・きよたか)
1970年(昭和45年)12月10日生まれ。愛知県名古屋市。
三重大学人文学部社会科学科卒業。
第29回(2005年)/2121篇
高瀬ちひろ(たかせ ちひろ)
1971年、東京生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科(修士課程)修了。
清冽な読後感をのこす、期待のデビュー作。
「……それからおもむろに口をひらくと、かつてこの村の沼近くで、まぐわう男女があった、とさらりと言ってのけたのだった」――エロティックなナマズ伝説と、幼い二人の恋心がクロスする新感覚の恋愛奇談。
第28回(2004年)/1533篇
朝倉祐弥(あさくら ゆうや)
1977年、和歌山県生まれ。
土踊りVS.入植。この国に突如誕生した二つの熱狂の興亡を、圧倒的なスケールで描く。
中島たい子(なかじま たいこ)
1969年東京生まれ。多摩美術大学卒業。放送作家を経て脚本家に。
ストレスだらけのあなたに贈る処方箋――
31歳独身の脚本家みのりは、元彼の結婚話を聞いて以来、原因不明の体調不良に。行き着いたのは漢方診療所。身体が回復していく過程は、自分をふりかえる時間でもあり…。第28回すばる文学賞受賞作。
第27回(2003年)/1315篇
金原ひとみ(かねはら ひとみ)
1983年生まれ。
蛇のように舌を二つに割るスプリットタンに魅せられたルイは舌ピアスを入れ身体改造にのめり込む。恋人アマとサディスティックな刺青師シバさんとの間で揺れる心はやがて…。第27回すばる文学賞、第130回芥川賞W受賞作。
千頭ひなた(ちかみ ひなた)
1972年1月24日生まれ。高知県香美郡出身。大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業
年下の男と出奔した母親の借金を抱え、バイトに励むボク、20歳。元同級生相手の売春、女二人男一人の奇妙な同居生活…、不穏な気配が日常に忍び寄る。自分をリセットできるだろうか…。
第26回(2002年)/1331篇
栗田 有起(くりた ゆき)
1972年2月17日生まれ。長崎県西海市(旧・崎戸町)出身。
夫はデザイナーの池田進吾。
はたちになる直前、ハムスターとマンションを相続した、まちる。実家を出て、一人暮らしを始めるが…。奇妙な設定を静かなユーモアで包んだ、注目作家のデビュー作ほか『豆姉妹』収録。
織田みずほ(おだ みずほ・男性)
1965年4月24日生まれ。神奈川県横浜市出身。青山学院大学文学部教育学科卒業
男性客相手の風俗のバイトをしている十七歳の高校生怜司は、新宿の「二十四時間制ロッカールーム」のひとつを契約し、夜のひと時を狭い箱の中で過ごしていた。ある日、そこで床にただ座り続ける中年男を見かけた怜司は、次第に中年男に惹かれていく。そして住所を突きとめ、彼が経営する倉庫でバイトを始めるが、朗らかなパートの中年女性達に囲まれて、少しずつ世の中との関わりを学び、受け入れるようになる。しかし、かつて「客」だった男が国語教師として着任してきて…。
竹邑 祥太(たけむら しょうた)
1983年7月21日生まれ。山口県新南陽市出身。
第25回(2001年)/908篇
大泉 芽衣子(おおいずみ めいこ)
1973年5月13日生まれ。埼玉県北葛飾郡出身。
早稲田大学第二文学部卒業。
自ら声を封じこめているうち、本当に声がでなくなった「僕」。治療者の勧めでホテルで働き始めるが、周囲に溶け込めず、ふとした誤解から従業員達を敵に回し、そして執拗ないじめを受け…。
第24回(2000年)/950篇
末弘 喜久(すえひろ よしひさ)
1956年6月28日生まれ。大分県宇佐市出身。
大分県立日田高等学校理数科、福岡大学工学部卒業。
最愛の妻を会社の同僚に奪われた木村は、彼らが去ってちょうど一年後の夏の日、塔のある遊園地のベンチに腰かけ、とりとめのない夢想に耽る…。
大久 秀憲(おおひさ ひでのり)
1972年10月24日生まれ。
帰郷した夏、少年野球の監督を引き受けた僕は、右目の不自由な少女・瑞穂と出会い、友人の北村を加えた奇妙な関係に…。心の奥深くにある、切実なノスタルジーに出会う夏。
第23回(1999年)/1702篇
中上紀(なかがみ のり・女性)
1971年東京生まれ。ハワイ州立ハワイ大学卒。
ハワイの大学に留学していた咲と裕美子は卒業旅行にタイを訪れた。咲は自分のルーツにつながる少数民族の村に伝わるブランコ=プレンカを探すために。裕美子はある思いを抱いて。北部の町・チェンライで山岳民族アカ族の青年とその妹と出会ったことから、二人の旅は変わり始める。それぞれの交錯する物語は、やがて思いもかけない結末を迎えることに…。
楠見 朋彦(くすみ ともひこ)
1972年10月10日生まれ。
旧ユーゴスラビアの都市で地下生活を送るアキラを中心に繰り出される言葉は、随時、語り手を替え、詩人や兵士や市民の言葉が引用され、報告、告白、手記、詩、批評と、絶えず口調を変えながら、セルビア人にもクロアチア人にも、ボスニア人にも、アメリカ人にも書きようのないテクストを編んでいる。
第22回(1998年)/1820篇
安達 千夏(あだち ちか)
1965年9月23日生まれ。山形県山形市出身。
抱かれるよりも、男を抱きたい。手の中で悦びに震えさせるために。性的関係にあっても男に恋愛感情が湧かないカナ。年下の女子学生に純愛と欲望を覚える-。男と女の新しい共生空間を描く。
第21回(1997年)/1188篇
岩崎保子
1968年4月9日札幌市生まれ。神田外語学院卒業。ニューヨーク留学後、出版社勤務、オーディオ機器のテクニカル・ライターを経て受賞。
身にしみる切なさ―。わたしがアル中?とんでもない!お酒だけならいつでも止められる。ヒロインは画家志望の若い女性で、大人の人生の出発において自立ということを志向しながら、しかし現実には職業を転々とし、あげく絵もうまくいかず、アルコール依存症になり、ホモ・セクシュアルの男性と同棲してかれに食べさせてもらう…。
清水 博子(しみず ひろこ)
1968年6月2日生まれ。
女流作家Iのすむ街、下北沢をさすらう女子学生の軌跡。5人の選考委員が自らの文学信条を賭けて激突した問題作。
第20回(1996年)/1598篇
デビット・ゾペティ(David Zoppetti)
1962年2月26日 スイス生まれ。
僕は旅が好きで、なんとなく日本に辿り着き、京都の大学で日本文学を勉強している。アルバイトで、目の不自由な若い女性・京子に、対面朗読をすることになって、文学に憧れをもつ京子とうちとけていき、彼女の心に受け入れられていくのを知った。でも、京都の『街』は、いちげんさんは受け入れてくれない―。古都を舞台に爽やかに描く恋愛長編。
第19回(1995年)/1410篇
茅野裕城子(ちの ゆきこ)
1955年東京生まれ。青山学院大学卒。大学卒業後、女優、トラベルライターなどを経て、世界各地を放浪の後、北京に留学。
語言不通、心、急…。男が書いた謎の言葉が、不思議な恋の始まりだった。性の相性は最高なのに、言葉がまったく通じない二人。急激に変化する現代の北京を舞台に、日本人女性と中国人男性の滑稽なほどの誤解と交感を軽やかに、鮮やかに描く。第十九回すばる文学賞受賞の表題作を含む三つの「越境する恋」の物語。
広谷 鏡子(ひろたに きょうこ)
1960年12月17日香川県丸亀市生まれ。
香川県立丸亀高等学校、早稲田大学第一文学部文芸科卒業後、NHKに入局。
寝たきりになり、娘に介護を受けている老女・ツタはある朝、自らの排泄物まみれになって目を覚ました―。なし崩しに奪われる人間の尊厳。女としての苦しみと孤独。そして、死はツタに着実に忍び寄っていた…。ある「秘密」をめぐって、愛憎に揺れる親子の絆を通し、現代日本のすべての家族にひそむ「不随」の病を見事に描き出した傑作。
第18回(1994年)/1545篇
第17回(1993年)/1576篇
引間徹(ひきま てつ)
1964年4月3日東京生まれ。早稲田大学文学部卒。
一周5キロのコースを片足に義足を付けロボットのごとく正確に、しかも驚くべき速さで歩く男。今の彼はオリンピック記録をも上回っているのだ。主人公はそんな彼に惹かれこのコースを19分25秒で競歩しようと挑戦を始める。このタイムこそは世界記録なのだ。
第16回(1992年)/1548篇
楡井亜木子(にれい あきこ)
1961年兵庫県生まれ。
高校1年生のユーリは、伝説のヴォーカル・三原に勧められ女性ロックバンドに参加する。学校とプロのミュージシャンとしての仕事、二重生活に追われるうちに自分を失いかけそうになったユーリは、フジシマという男に出会って――。女子高生ミュージシャンの日々の想いと旅立ち。
白石 一文(しらいし かずふみ)
1958年8月27日生まれ。
父は直木賞作家の白石一郎。双子の弟は小説家の白石文郎。
2010年「ほかならぬ人へ」で直木賞を受賞。
第15回(1991年)/1188篇
釉木 淑乃(ゆうき よしの)
1955年10月3日-2008年4月14日
露文タイピスト。埼玉県志木市生まれ。青山学院高等部を卒業。
小説の愉しみにみちた世界へ! 双子の兄弟の問に漂う妖しい空気…。小さなパーティに集う人たちの絡みあう過去と現在が、春の日の短い時間の流れの中に映し出される。
仁川 高丸(にがわ たかまる・女性)
1963年兵庫県生まれ。立命館大学文学部西洋史学科卒業。
女子高生・藤乃。赤みがかった髪を狼カットにしている。彼女にはゲイの父親と、暴力的な恋人・誠がいた。そんな藤乃に接近してくる社会科の非常勤講師・三島麻純23歳。三島は自らがレズビアンであることを公表している。揺れ動く藤乃の心の中で、次第に三島の存在が大きくなって…。女子高生と女教師の奇妙で熱い愛の光景を、確かな筆致とみずみずしい感性で描く衝撃作。
第14回(1990年)/1099篇
大鶴義丹 (おおつる ぎたん)
1968年4月24日生まれ。
俳優、小説家、映画監督。ケイダッシュ所属。
一秒一秒のなかに永遠があった―。サーファーたちと女たちのはちきれそうな夏、蜃気楼のような揺らめきの日々。そして加速する時間の果ての一瞬の狂気!
清水 アリカ(しみず ありか)
1962年- 2010年9月4日
日本の小説家。兵庫県神戸市出身。同志社大学文学部英文科卒。
「世界」とは巨大な再生装置だ。そこにオレのテープをセットする。そしてスイッチをオンにする。聞こえてくるのは? 「音を視ろ!」。視覚と聴覚をめぐる新感覚の文学。
山室一広(やまむろかずひろ)
1962年6月1日神奈川県生まれ。学習院大学中退。
市立動物園に待望のゾウがやって来る! 到着を待ちわびる人々のもとに、ゾウが暴れだしたという知らせが…。ゾウに関わる人々の想いに動物園の歴史が交錯する力作。
第13回(1989年)/1125篇
奈良 裕明(なら ひろあき)
1960年5月13日東京都生まれ。
銀座の街路という街路を、全国から集まったチンドン屋さんで埋め尽くそう!奮起する若者たちのユーモラスな活躍と青春の輝きを生き生きと描く。
辻 仁成(つじ ひとなり)
1959年10月4日生まれ。
作家、ミュージシャン、映画監督、演出家。所属事務所はタイタン。
僕にはヒカルがいる。しかし、ヒカルは僕にしか見えない。伝言ダイヤルで知り合ったサキ。でも、知っているのは彼女の声だけ。あとは、冷たい視線と敵意にあふれた教室、崩壊寸前の家庭…。行き場を見失い、都会のコンクリートジャングルを彷徨する孤独な少年の心の荒廃と自立への闘い、そして成長―。ブランク・ジェネレーションに捧げる新しい時代の青春文学。
第12回(1988年)/1107篇
第11回(1987年)/1053篇
桑原一世(くわばら いちよ)
1946年2月-2006年2月28日
大阪府生まれ。京都女子大学国文科中退。
16歳の高校生のぼくは医学部志望。母親の過保護で息がつまりそうだ。父は子供のことがまるでわかっていないのに父親役を演じ、ぼくは父のことなどまるで知らないのに子供役を演じてる。IQ157の兄は突然に登校拒否と家庭内暴力に走り、その後は家族を避けてガレージに閉じ篭った。そんな家に帰りたくないと思うが、ぼくは利口だから決して反抗はしない。クロス・ロードにたたずみぼくは迷う。いったいどの道を進めばいいのか?
松本 侑子(まつもと ゆうこ)
1963年6月17日生まれ。
小説家、エッセイスト、翻訳家。
食べるということは、どういうことなのでしょうか。真剣な食欲とは、どのようなものなのでしょうか。わからないのです。いくら食べても、胃袋も心も満たされない食行動…。母親との関係に悩み、恋人ともうまくゆかず、過食に溺れる21歳の女子大生時子。都会で一人暮しをする若い女性の不安と孤独を描く。
第10回(1986年)/952篇
本城 美智子(ほんじょう みちこ)
1953年10月13日 – 2015年4月9日)神奈川県生まれ。
明治学院大学文学部卒業。
江の島に住んでいる“えみ”ちゃんは16歳の高校生。おうちではお兄ちゃんとお母さんのペットとなって、いつも明るく元気いっぱい。でも心の内では、早くも人生に絶望しかけていたりして…。そんな“えみ”ちゃんが夜中にボーイフレンドと会ったことからとんでもないことが…。「すばる文学賞」で飛び出した若い才能。
第9回(1985年)/945篇
藤原 伊織(ふじわら いおり)
1948年2月17日-2007年5月17日
大阪府大阪市出身
大学の心理学科に通う「僕」は、ひょんなことから自閉的な少女・下路マリの家庭教師を引き受けることになる。「僕」は彼女の心の病を治すため、異空間にワープしたダックスフントの物語を話し始める。彼女は徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていったが…。表題作ほか三篇。
江場 秀志(えば ひでし)
1946年生まれ。精神科医。
茨城県生まれ。信州大学医学部卒。
すばる文学賞受賞作。暑熱の中、樹木や草や石が息をつめ老婆の心象は沖縄の自然と一体化する。深い体験を生む小説空間。
第8回(1984年)/926篇
原田 宗典(はらだ むねのり)
1959年3月25日生まれ。東京都新宿区新大久保、および岡山県岡山市出身。
朔北の大地に生きる人々の熱き思いを詩情豊かに謳う雪のメルヘン!時代をこえて読みつがれる美しい青春小説!
第7回(1983年)/918篇
佐藤正午(さとう しょうご)
1955年長崎県生まれ。1983年本作で第七回すばる文学賞を受賞。
失業したとたんにツキがまわってきた。婚約相手との関係を年末のたった二時間で清算できたし、趣味の競輪は負け知らずで懐の心配もない。おまけに、色白で脚の長い女をモノにしたのだから、ついてるとしか言いようがない。二十七歳の年が明け、田村宏の生活はツキを頼りに何もかもうまくいくかに思われた。ところがその頃から街でたびたび人違いに遭い、厄介な男にからまれ、ついには不可解な事件に巻き込まれてしまう。自分と瓜二つの男がこの街にいる―。現代作家の中でも群を抜く小説の名手、佐藤正午の不朽のデビュー作。
第6回(1982年)/865篇
伊達 一行(だて いっこう)
1950年12月24日生まれ。秋田県出身。
青山学院大学文学部神学科卒業。
僕はポルノ出版社のカメラマン。友人の神崎は編集者で、母親とのセックスが最高、という変わった男だ。彼に紹介された美女・沙耶を間にはさんで、僕と神崎はいつしか三角関係に…。清新な文体で現代の性を追究した、すばる文学賞受賞の話題作。
第5回(1981年)/945篇
本間 洋平(ほんま ようへい)
1948年11月9日長野県長野市生まれ。
茨城大学経済学部卒業。
優秀なボクとダメな弟…。そんなボクらの前に一風変わった家庭教師が出現して、事態は急変!受験戦争を軽快に笑いとばした第5回すばる文学賞受賞作。
第4回(1980年)/1106篇
又吉 栄喜(またよし えいき)
1947年7月15日生まれ。
沖縄県浦添村(現・浦添市)出身。琉球大学法文学部史学科卒。
怒りと悲しみの血を吸い込んだ沖縄の土地に繰り広げられる恐喝、暴行、殺人…。沖縄の地を生の根源とする作家の鮮烈な想像力の閃めき。熱気をはらんだ筆致の第一創作集。
笹倉 明(ささくら あきら)
1948年11月14日生まれ。
タイ在住の、上座部仏教の日本人比丘(僧侶)。比丘としての名前はプラ・アキラ・アマロー
タツミには確かな目標があった訳ではない。たどり着いたのがロンドンだったのだ。ナン焼きのためにケロイドができた左手をいつもポケットに入れて歩くネパール人グルン。子守りとなって挫折してゆく日本人女子留学生ナオコ…。白人から「黄色人」と軽蔑されながらもしぶとく生きる若者達をタツミの目を通して爽やかに描いた「すばる文学賞」入選作。他に「光の休暇」「闇の喜劇」を収める。
第3回(1979年)/982篇
松原 好之(まつばらよしゆき)
1952年7月28日生まれ。
予備校講師。医系予備校「進学塾ビッグバン」代表。
第2回(1978年)/711篇
森瑤子(もり ようこ)
1940年11月4日-1993年7月6日
静岡県伊東市出身。
33歳の夏、いつだって感動的だった夕暮れが、突然、美しさを失った。もう私は若くない…。外国人ジャーナリストとの情事にのめりこんでゆく女の内面を鮮やかに写す話題作。
吉川良(よしかわ・まこと)
1937年、東京生まれ。芝高等学校卒、駒澤大学仏教学部中退。
勝った負けたと騒ぐじゃない。勝ち負けなど贅沢だ。俺は働きづめ、毎日が引き分けだ…。死病の母を世話し、好きな女との甘い暮らしを夢見る青年。その幸福になろうとする強い意志を骨太に描く「自分の戦場」(第2回すばる文学賞)のほか、「八月の光を受けよ」(第81回芥川賞候補)と「クレパスの金と銀」の中篇3本を収録。
飯尾 憲士(いいお けんし)
1926年8月21日-2004年7月26日)
大分県竹田市生まれ。父は朝鮮民族。
第1回(1977年)/1017篇
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