河合隼雄物語賞・学芸賞とは・第1回(2013年)~現在までの受賞作品のすべて

2019-06-14文学賞

河合隼雄物語賞・学芸賞とは・第1回(2013年)~現在までの受賞作品のすべて

河合隼雄物語賞とは

発表:5月

主催:河合隼雄財団

河合隼雄財団が運営する文学賞と学術賞。
河合隼雄物語賞は「人のこころを支えるような物語をつくり出した優れた文芸作品に与えられる。河合隼雄が深く関わっていた児童文学もその対象とする」とされ、河合隼雄学芸賞は「優れた学術的成果と独創をもとに、様々な世界の深層を物語性豊かに明らかにした著作に与えられる」とされる。
選考は1年ごとに行われ、毎年3月からさかのぼって2年の期間内に発表・発行された作品を選考対象とする。

選考結果の公式発表は『新潮』8月号(7月上旬発売)誌上および「webでも考える人」サイトにて行う。
候補作品については公表しない。

出典:ウィキペディア河合隼雄財団

河合隼雄(心理学者・ウィキペディア)
生年月日:1928年6月23日
活動期間:~2007年7月19日(79歳没)

 

第9回(2021年)

寺地 はるな/水を縫う


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松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。
学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが――「みなも」
いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは――「愛の泉」ほか全六章。
世の中の〈普通〉を踏み越えていく、清々しい家族小説。

 

第8回(2020年)

該当作品なし

 

第7回(2019年)

物語賞:ののはな通信

著者:三浦しをん

横浜で、ミッション系のお壌様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なののと、外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。二人はなぜか気が合い、かけがえのない親友同士となる。しかし、ののには秘密があった。いつしかはなに抱いた、友情以上の気持ち。それを強烈に自覚し、ののは玉砕覚悟ではなに告白する。不器用にはじまった、密やかな恋。けれどある裏切りによって、少女たちの楽園は、音を立てて崩れはじめ…。運命の恋を経て、少女たちは大人になる。女子の生き方を描いた傑作小説。女子校で出会い、運命の恋を得た少女たちの20年超を、全編書簡形式で紡いだ、女子大河小説の最高峰。

 

学芸賞:土 地球最後のナゾ-100億人を養う土壌を求めて

著者:藤井一至

世界の土はたった12種類。しかし、毎日の食卓を支え、地球の未来を支えてくれる本当に「肥沃な土」はどこに?そもそも土とは一体何なのか?泥にまみれて地球を巡った研究者の汗と涙がにじむ、一綴りの宝の地図。

 

第6回(2018年)

物語賞:光の犬

著者:松家仁之

北の町に根づいた一族三代と、そのかたわらで人びとを照らす北海道犬の姿。信州・追分に生まれ、助産婦となって道東の町・枝留にやってきた祖母。戦前に隆盛をきわめた薄荷工場の役員である祖父。川釣りと北海道犬が趣味の生真面目な父。子どもたちを頼みに生きる専業主婦の母。幼なじみの牧師の息子と恋をする歩。レコードと本に没頭する気難しい始。いずれも独身のまま隣に暮らす、父の三姉妹。祖母の幼少時である明治期から、50代になった始が東京から帰郷し、父母と三人のおばたちの老いにひとり向きあう現在まで、100年にわたる一族の、たしかにそこにあった生のきらめきと生の翳りを、ひとりひとりの記憶をたどるように行きつ戻りつ描きだす、新作長篇小説。

 

学芸賞:ケルト 再生の思想

著者:鶴岡真弓

近年、急速に広まったイヴェント「ハロウィン」。この祭りに封印されたケルト文明の思想を解きあかし、古代ヨーロッパの精霊を現代へよみがえらせる。

 

第5回(2017年)

物語賞:あひる

著者:今村夏子

あひるを飼い始めてから子供がうちによく遊びにくるようになった。あひるの名前はのりたまといって、前に飼っていた人が付けたので、名前の由来をわたしは知らない―。わたしの生活に入り込んできたあひると子供たち。だがあひるが病気になり病院へ運ばれると、子供は姿を見せなくなる。2週間後、帰ってきたあひるは以前よりも小さくなっていて…。日常に潜む不安と恐怖をユーモアで切り取った、河合隼雄物語賞受賞作。

 

学芸賞:落語に花咲く仏教 宗教と芸能は共振する

著者:釈徹宗

仏教を知れば、落語は何倍も楽しめる。宗教学者であり僧侶でもある著者が、小さい頃から親しんできた落語と宗教がじつは密接なつながりをもつことに着目し、歴史的に文化的に人間学的に読み解く。芸能の発生には宗教の儀礼がふかく関係し、古代の社会では宗教と芸能とアートは渾然一体となっていた。日本の「語り芸能」や「話芸」は仏教の説教の影響が大きく、説経節、講談、浪曲、落語などには仏教的要素があふれている。江戸時代の落語の祖である策伝上人『醒睡笑』から、現在の「八五郎坊主」「子ほめ」「平林」などの源流をさぐり、僧侶や宗派仏教を揶揄する噺を読み取り、宗教や芸能が交叉し響き合う部分を見通す。それは現代人の宗教性を成熟させる道のりでもある。「蒟蒻問答」「始末の極意」「後生鰻」「松山鏡」「宗論」など人気の噺の理解がぐっと深まる。

 

第4回(2016年)

物語賞:悪声

著者:いしいしんじ

「ええ声」を持つ少年はいかにして「悪声」となったのか―ほとばしるイメージ、疾走するストーリー。物語の名手が一切のリミッターを外して書き下ろした問題作。

 

学芸賞:江戸日本の転換点  水田の激増は何をもたらしたか

著者:武井弘一

なぜ水田を中心にした社会は行き詰まったのか。老農の証言から浮かび上がる歴史の深層。米づくりは持続可能だったのか?新田開発は社会を豊かにする一方で農業に深刻な矛盾を生み出した。エコでも循環型でもなかった“江戸時代”をリアルに描き出す力作。

 

第3回(2015年)

物語賞:かたづの!

著者:中島京子

遠野の羚羊の片角には霊妙な伝説がある。慶長五年、根城南部氏当主直政の妻・祢々は片角の羚羊と出会う。直政と幼い嫡男・久松が立て続けに不審な死を遂げた直後から、叔父の三戸南部氏・利直の謀略が見え隠れしはじめた。次次とやってくる困難に祢々は機転と知恵だけで立ち向かう。「戦でいちばんたいせつなことは、やらないこと」を信条に波瀾万丈の一生を送った江戸時代唯一の女大名の一代記。河合隼雄物語賞(第三回)、歴史時代作家クラブ賞作品賞(第四回)、柴田錬三郎賞(第二十八回)、王様のブランチブックアワード2014大賞受賞作!!

 

学芸賞:自由という牢獄

著者:大澤真幸

個人の自由こそが最大の価値であるリベラルな社会においても、実際はさまざまな意味でそれが空虚なものとなっている。そんな「自由という名の牢獄」から、私たちはどうやって抜け出すことができるのか。本書は、責任・公共性・資本主義との関係から、自由という概念そのものを鍛え直し、変形し、その限界を克服するための探究である。

 

第2回(2014年)

物語賞:私のなかの彼女

著者:角田光代

「男と張り合おうとするな」醜女と呼ばれながら、物書きを志した祖母の言葉の意味は何だったのだろう。心に芽生えた書きたいという衝動を和歌が追い始めたとき、仙太郎の妻になり夫を支える穏やかな未来図は、いびつに形を変えた。母の呪詛、恋人の抑圧、仕事の壁。それでも切実に求めているのだ、大切な何かを。全てに抗いもがきながら、自分の道へ踏み出してゆく、新しい私の物語。

 

学芸賞:首里城への坂道:鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像

著者:与那原恵

大正末期から昭和初期、大々的な琉球芸術調査を行い、貴重かつ膨大な資料を残した研究者・鎌倉芳太郎。稀代の記録者の仕事を紹介する本邦初の評伝であるとともに、彼に琉球文化の扉を開いた人々の姿、そしてそれが現代に繋がるまでの熱きドラマを描く。第二回河合隼雄学芸賞、第十四回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞をダブル受賞。

 

第1回(2013年)

物語賞:ふくわらい

著者:西加奈子

暗闇での福笑いを唯一の趣味とする編集者の鳴木戸定。愛情も友情も知らず不器用に生きる彼女は、愛を語る盲目の男性や、必死に自分を表現するレスラーとの触れ合いの中で、自分を包み込む愛すべき世界に気づいていく。第1回河合隼雄物語賞受賞作。

 

学芸賞:ナチスのキッチン

著者:藤原辰史

国民社会主義(ナチス)による支配体制下で、人間と食をめぐる関係には何が生じたのか? この強烈なモティーフのもと、竃(かまど)からシステムキッチンへ、近代化の過程で変容する、家事労働、レシピ、エネルギーなどから、「台所」という空間のファシズムをつぶさに検証し、従来のナチス研究に新たな一歩を刻んだ画期的な成果。第1回(2013年度)河合隼雄学芸賞を受賞した、著者の代表作。

 

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Posted by 綾糸