吉川英治文学新人賞・第1回(1979)~現在までの受賞作品のすべてと近年の候補作品

2019-06-08文学賞

吉川英治文学新人賞・第1回(1979)~現在までの受賞作品のすべてと近年の候補作品

目次

吉川英治文学新人賞とは

発表:3月

主催:公益財団法人吉川英治国民文化振興会
後援:講談社
※吉川英治文化賞・吉川英治文庫賞も同主宰。

1980年に創設された文学賞。以降年1回発表されている。受賞は選考委員の合議によって決定される。受賞者には正賞として賞牌、副賞として100万円と置時計が授与される。新人賞という名ではあるが、実態としては中堅の作家が候補者・受賞者の多くを占め、デビュー30年近い受賞者も存在する。

出典:ウィキペディア講談社

吉川英治(ウィキペディア)
生年月日:1892年8月11日
活動期間:1923年~2062年(70歳没)

 

 

※表記の西暦は発表の年になっています。

 

第42回-2021年

受賞:加藤シゲアキ/オルタネート

出版社:新潮社
刊行日: 2020年11月刊

高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、若者たちの運命が、鮮やかに加速していく。
“あの頃"の煌めき、そして新たな旅立ちを端正かつエモーショナルな筆致で紡ぐ、新時代の青春小説。

出版社: 新潮社
刊行日: 2020年11月刊
単行本 : 384ページ
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第41回-2020年

受賞:今村翔吾/八本目の槍

出版社:新潮社

石田三成は、何を考えていたのか? そこに「戦国」の答えがある! 秀吉の配下となった八人の若者。七人は「賤ケ岳の七本槍」とよばれ、別々の道を進む。出世だけを願う者、「愛」だけを欲する者、「裏切り」だけを求められる者――。残る一人は、関ケ原ですべてを失った。この小説を読み終えたとき、その男、石田三成のことを、あなたは好きになるだろう。歴史小説最注目作家、期待の上をいく飛翔作。

 

受賞:呉 勝浩/スワン

出版社:KADOKAWA

巨大ショッピングモール「スワン」で起きた無差別銃撃事件。死者21名を出した悲劇の渦中で、高校生のいずみは犯人と接しながら生き延びた。しかし、同じく事件に遭遇した同級生・小梢により、次に誰を殺すか、いずみの指名によって犯行が行われたという事実が週刊誌で暴露される。被害者から一転、非難の的となったいずみ。そんななか、彼女のもとに招待状が届く。集められたのは事件に巻き込まれ、生き残った5人の関係者。目的は事件の中のひとつの「死」の真相をあきらかにすること。その日、本当に起こったこととはなんだったのか?

 

候補作品

著者 作品
相沢沙呼 medium 霊媒探偵城塚翡翠
伊岡 瞬 不審者
凪良ゆう 流浪の月
平岡陽明 ロス男

 

第40回-2019年

受賞:歪んだ波紋

著者:塩田武士
出版社: 講談社

「誤報」にまつわる5つの物語。新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディア―昭和が終わり、平成も終わる。気づけば私たちは、リアルもフェイクも混じった膨大な情報に囲まれていた。その混沌につけ込み、真実を歪ませて「革命」を企む“わるいやつら”が、この国で蠢いている。松本清張は「戦争」を背負って昭和を描いた。塩田武士は「情報」を背負い、平成と未来を描く。全日本人必読。背筋も凍る世界が見えてくる。

 

受賞:ハロー・ワールド

著者:藤井太洋
出版社:講談社

専門を持たない「何でも屋」エンジニアの文椎の武器は、ささやかなITテクニックと仕事仲間と正義感。郭瀬と汪の3人でチーム開発した、広告ブロッカーアプリ“ブランケン”が、突然インドネシア方面で爆発的に売れ出した。“ブランケン”だけが消せる広告は政府広報だ。東南アジアの島国で何が起こっているのか―。果たして彼らはとんでもない情報を掴んでしまった。文椎は、第二のエドワード・スノーデンなるか?

 

候補作品

著者 作品
呉勝浩 マトリョーシカ・ブラッド
武田綾乃 その日、朱音は空を飛んだ
三秋縋 君の話

 

第39回-2018年

受賞:Ank: a mirroring ape

著者:佐藤究
出版社:講談社

2026年、多数の死者を出した京都暴動。ウィルス、病原菌、化学物質が原因ではない。そしてテロ攻撃の可能性もない。発端となったのは一頭の類人猿。東アフリカからきた「アンク(鏡)」という名のチンパンジーだった―。

 

候補作品

著者 作品
伊吹有喜 彼方の友へ
小川哲 ゲームの王国
呉勝浩 白い衝動
澤田瞳子 火定

 

第38回-2017年

受賞:ミッドナイト・ジャーナル

著者:本城雅人
出版社:講談社

児童誘拐殺害事件で大誤報を打ち、中央新聞社会部を追われ、支局に飛ばされた関口豪太郎。あれから七年。埼玉東部で、小学生の女児を狙った連れ去り未遂事件が発生。犯人は二人いたとの証言から、豪太郎の脳裏に“あの時”の疑念がよぎる。終わったはずの事件が再び動き出す。

 

受賞:彼女がエスパーだったころ

著者:宮内悠介
出版社:講談社

スプーンなんて、曲がらなければよかったのに―。百匹目の猿、エスパー、オーギトミー、代替医療…人類の叡智=科学では捉えきれない超常現象を通して、人間は再発見される。進化を、科学を、未来を―人間を疑え。SFとミステリの枠を超えたエンターテインメント短編集。

 

候補作品

著者 作品
芦沢央 許されようとは思いません
木下昌輝 天下一の軽口男
塩田武士 罪の声
葉真中顕 コクーン

 

第37回-2016年

受賞:Aではない君と

著者:薬丸岳
出版社:講談社

あの晩、あの電話に出ていたら。同級生の殺人容疑で十四歳の息子・翼が逮捕された。親や弁護士の問いに口を閉ざす翼は事件の直前、父親に電話をかけていた。真相は語られないまま、親子は少年審判の日を迎えるが。少年犯罪に向き合ってきた著者の一つの到達点にして真摯な眼差しが胸を打つ吉川文学新人賞受賞作。

 

候補作品

著者 作品
須賀しのぶ 革命前夜
中脇初枝 世界の果てのこどもたち
本城雅人 トリダシ
湊かなえ リバース
柚月裕子 孤狼の血

 

 

第36回-2015年

受賞:まるまるの毬

著者:西條奈加
出版社:講談社

親子三代で菓子を商う「南星屋」は、売り切れご免の繁盛店。武家の身分を捨てて職人となった治兵衛を主に、出戻り娘のお永とひと粒種の看板娘、お君が切り盛りするこの店には、他人に言えぬ秘密があった。愛嬌があふれ、揺るぎない人の心の温かさを描いた、読み味絶品の時代小説。

 

候補作品

著者 作品
千早茜 男ともだち
堂場瞬一 警察回りの夏
葉真中顕 絶叫
吉川永青 誉れの赤

 

第35回-2014年

受賞:村上海賊の娘

著者:和田竜
出版社:新潮社

『のぼうの城』から六年。四年間をこの一作だけに注ぎ込んだ、ケタ違いの著者最高傑作! 和睦が崩れ、信長に攻められる大坂本願寺。毛利は海路からの支援を乞われるが、成否は「海賊王」と呼ばれた村上武吉の帰趨にかかっていた。折しも、娘の景は上乗りで難波へむかう。家の存続を占って寝返りも辞さない緊張の続くなか、度肝を抜く戦いの幕が切って落とされる! 第一次木津川合戦の史実に基づく一大巨篇。

 

第34回-2013年

受賞:国を蹴った男

著者:伊東潤
出版社:講談社

信玄や信長、秀吉は天下に手を伸ばした名将でありながら、ときに義を忘れ欲から逃れられずに生涯を閉じた。一方で、彼らに翻弄されつつも恩を重んじ、自らの信念を貫き通した者たちがいた。明日なき乱世で、誇り高き牢人、茶人、職人らが命を賭して挑む、それぞれの戦いを活写する。

 

受賞:機龍警察 暗黒市場

著者:月村了衛
出版社:早川書房

警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部は、旧知のロシアン・マフィアと組んで武器密売に手を染めた。一方、市場に流出した新型機甲兵装が“龍機兵(ドラグーン)”の同型機ではないかとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手した―日本とロシア、二つの国をつなぐ警察官の秘められた絆。リアルにしてスペクタクルな“至近未来”警察小説、世界水準を宣言する白熱と興奮の第3弾。

 

第33回-2012年

受賞:地の底のヤマ

著者:西村健
出版社:講談社

昭和三十八年。福岡県の三池炭鉱で大規模な爆発事故が起きた夜に、一人の警察官が殺された。その息子・猿渡鉄男は、やがて父と同じく地元の警察官となり、事件の行方を追い始める。労働争議や炭塵爆発事故の下、懸命に生きる三池の人々と、「戦後の昭和」ならではの事件を描いた、社会派大河ミステリー。

 

第32回-2011年

受賞:ツナグ

著者:辻村深月
出版社:新潮社

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員…ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。

 

第31回-2010年

受賞:鉄の骨

著者:池井戸潤
出版社:講談社

中堅ゼネコン・一松組の若手、富島平太が異動した先は“談合課”と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾く―技術力を武器に真正面から入札に挑もうとする平太らの前に「談合」の壁が。組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ。

 

受賞:天地明察

著者:冲方丁
出版社:角川書店

徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く――。
日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。第7回本屋大賞受賞作。

 

第30回-2009年

受賞:田村はまだか

著者:朝倉かすみ
出版社:光文社

深夜のバー。小学校のクラス会三次会。男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。’09年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。傑作短編「おまえ、井上鏡子だろう」を特別収録。

 

受賞:ジョーカー・ゲーム

著者:柳広司
出版社:角川書店

五感と頭脳を極限まで駆使した、 命を賭けた「ゲーム」に生き残れ――。
異能の精鋭たちによる、究極の"騙し合い"!結城中佐の発案で陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校“D機関"。「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。この戒律を若き精鋭達に叩き込み、軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関"の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げてゆく……。
東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる、究極のスパイ・ミステリー。

 

第29回-2008年

受賞:ミノタウロス

著者:佐藤亜紀
出版社:講談社

帝政ロシア崩壊直後の、ウクライナ地方、ミハイロフカ。成り上がり地主の小倅(こせがれ)、ヴァシリ・ペトローヴィチは、人を殺して故郷を蹴り出て、同じような流れ者たちと悪の限りを尽くしながら狂奔する。発表されるやいなや嵐のような賞賛を巻き起こしたピカレスクロマンの傑作。

 

第28回-2007年

受賞:一瞬の風になれ

著者:佐藤多佳子
出版社:講談社

春野台高校陸上部、1年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感……ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。青春陸上小説、第一部、スタート!

 

第27回-2006年

受賞:隠蔽捜査

著者:今野敏
出版社:新潮社

竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は〈変人〉という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。警察小説の歴史を変えた、吉川英治文学新人賞受賞作。

 

第26回-2005年

受賞:夜のピクニック

著者:恩田陸
出版社:新潮社

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

 

受賞:幸福な食卓

著者:瀬尾まいこ
出版社:講談社

佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて……。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。

 

第25回-2004年

受賞:アヒルと鴨のコインロッカー

著者:伊坂幸太郎
出版社:東京創元社

ボブ・ディランはまだ鳴っているんだろうか?

引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は――たった1冊の広辞苑!? そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ! 清冽な余韻を残す傑作ミステリ。

 

受賞:ワイルド・ソウル

著者:垣根涼介
出版社:幻冬舎

その地に着いた時から、地獄が始まった――。1961年、日本政府の募集でブラジルに渡った衛藤。だが入植地は密林で、移民らは病で次々と命を落とした。絶望と貧困の長い放浪生活の末、身を立てた衛藤はかつての入植地に戻る。そこには仲間の幼い息子、ケイが一人残されていた。そして現代の東京。ケイと仲間たちは、政府の裏切りへの復讐計画を実行に移す! 歴史の闇を暴く傑作小説。

 

第24回-2003年

受賞:終戦のローレライ

著者:福井晴敏
出版社:講談社

昭和20年、日本が滅亡に瀕していた夏。崩壊したナチスドイツからもたらされた戦利潜水艦・伊507が、男たちの、国家の運命をねじ曲げてゆく。五島列島沖に沈む特殊兵器・ローレライとはなにか。終戦という歴史の分岐点を駆け抜けた魂の記録が、この国の現在を問い直す。

 

受賞:其の一日

著者:諸田玲子
出版社: 講談社

安政7年3月3日、井伊家の密偵・可寿江(かずえ)は水戸浪士の不穏な動きを察知し、主君でかつて恋人でもあった直弼に通報しようとするが。「桜田門外の変」「箕輪心中」などの事件を題材に、江戸市中で懸命に生きる人々の、運命を変えた1日を描いた時代小説短編集。全4編を収録。

 

第23回-2002年

受賞:パイロットフィッシュ

著者:大崎善生
出版社:角川書店

優しさの限りない力を描いた永遠の青春小説。吉川英治文学新人賞受賞作。

かつての恋人から19年ぶりにかかってきた一本の電話。アダルト雑誌の編集長を務める山崎がこれまでに出会い、印象的な言葉を残して去っていった人々を追想しながら、優しさの限りない力を描いた青春小説。

 

第22回-2001年

受賞:深紅

著者:野沢尚
出版社:講談社

父と母、幼い二人の弟の遺体は顔を砕かれていた。秋葉家を襲った一家惨殺事件。修学旅行でひとり生き残った奏子は、癒しがたい傷を負ったまま大学生に成長する。父に恨みを抱きハンマーを振るった加害者にも同じ年の娘がいたことを知る。正体を隠し、奏子は彼女に会うが!?吉川英治文学新人賞受賞の衝撃作。

 

第21回-2000年

受賞:深川恋物語

著者:宇江佐真理
出版社:集英社

大店のお嬢さんが、お仕着せの人生を捨て、真に愛する人と共に生きようとする姿が清清しい「下駄屋おけい」。互いを想う気持ちがすれ違っていく夫婦の、やりきれなさが胸に迫る「さびしい水音」。交錯する恋心に翻弄されていく男女四人の哀しみが描かれる「仙台堀」など、江戸・深川を舞台に繰りひろげられる、六つの切ない恋物語。

 

第20回-1999年

受賞:恋愛中毒

著者:山本文緒
出版社:角川書店

–どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。水無月の堅く閉ざされた心に、強引に踏み込んできた小説家の創路。調子がよくて甘ったれ、依存たっぷりの創路を前に、水無月の内側からある感情が湧き上がってくる–。世界の一部にすぎないはずの恋が、私のすべてをしばりつけるのはどうして。恋愛感情の極限を抉り出す、戦慄のベストセラー小説。直木賞作家の原点。

 

第19回-1998年

受賞:皆月

著者:花村萬月
出版社:講談社

諏訪徳雄は、コンピュータおたくの四十男。ある日突然、妻の沙夜子がコツコツ貯めた1千万円の貯金とともに蒸発してしまった。人生に躓き挫折した夫、妻も仕事も金も希望も、すべて失った中年男を救うのは、ヤクザ者の義弟とソープ嬢!? 胸を打ち、魂を震わせる「再生」の物語。

 

第18回-1997年

受賞:不夜城

著者:馳星周
出版社:角川書店

アジア屈指の歓楽街・新宿歌舞伎町の中国黒社会を器用に生き抜く劉健一。だが、かつての相棒・呉富春が町に戻り、事態は変わった。生き残るために嘘と裏切りを重ねる人間たちの危険な物語。

 

受賞:鷲の驕り

著者:服部真澄
出版社:祥伝社

「発明家クレイソンを調査してほしい」在米のコンピュータ・セキュリティの専門家笹生勁史に、通産省から極秘依頼があった。クレイソンは日本企業に訴訟を起こし、巨万の富を得ているという。問題は、米国の「特許法」の特異性にあった。先端技術の特許を牛耳る米国に、日本、そして正体不明の産業スパイ、マフィア、ハッカーが暗躍、手に汗握る国際サスペンス巨編。

 

第17回-1996年

受賞:ホワイトアウト

著者:真保裕一
出版社:新潮社

日本最大の貯水量を誇るダムが、武装グループに占拠された。職員、ふもとの住民を人質に、要求は50億円。残された時間は24時間! 荒れ狂う吹雪をついて、ひとりの男が敢然と立ち上がる。同僚と、かつて自分の過失で亡くした友の婚約者を救うために――。圧倒的な描写力、緊迫感あふれるストーリー展開で話題をさらった、アクション・サスペンスの最高峰。

 

受賞:らせん

著者:鈴木光司
出版社:角川書店

“リング”の恐怖に連なる、カルトホラー!

幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山の解剖を担当し、冠動脈から正体不明の肉腫を発見した。遺体からはみ出した新聞に書かれた数字は「リング」という言葉を暗示していた。

 

第16回-1995年

受賞:地下鉄に乗って

著者:浅田次郎
出版社:徳間書店

永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは30年前の風景。ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で精力的に商いに励む父に出会う。だが封印された“過去”に行ったため……。思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド。

 

受賞:刑務所ものがたり

著者:小嵐九八郎
出版社:文藝春秋

懲罰にも負けず、一日一合のドブロクを呑み、いつもニコニコ笑っている。私はこんな囚人になりたい。笑いと涙のレジスタンス小説。

 

第15回-1994年

受賞:樹の上の草魚

著者:薄井ゆうじ
出版社:講談社

ペニスのことなんて、いったい誰に相談すればいいんだ。僕は、男なのか女なのか。いや、そもそも僕はなんなのだろうか。アンドロジナスな主人公、そして登場人物の温かく細やかな心のゆらぎは、読む者の内面にやさしく触れ、本当の自分を気付かせてくれる。温かい感動をよぶ、吉川英治文学新人賞受賞作。

 

受賞:大砲松

著者:東郷隆
出版社:講談社

神田和泉橋の五兵衛店(だな)に住む締出し松こと松三は、故あっての長屋暮らしだが贅沢三昧。実は大名家お出入りを許された槍屋「槍丹」の息子である。時は幕末、慶応4年、背中の傷(いれずみ)を見こまれて上野彰義隊へ入隊、大砲掛を仰せつけられたまではよかったが……。吉川英治文学新人賞受賞の破天荒な痛快時代小説。

 

第14回-1993年

受賞:三たびの海峡

著者:帚木蓬生
出版社:新潮社

「一度目」は戦時下の強制連行だった。朝鮮から九州の炭鉱に送られた私は、口では言えぬ暴力と辱めを受け続けた。「二度目」は愛する日本女性との祖国への旅。地獄を後にした二人はささやかな幸福を噛みしめたのだが…。戦後半世紀を経た今、私は「三度目の海峡」を越えねばならなかった。“海峡”を渡り、強く成長する男の姿と、日韓史の深部を誠実に重ねて描く山本賞作家の本格長編。

 

第13回-1992年

受賞:今夜、すべてのバーで

著者:中島らも
出版社:講談社

薄紫の香腺液の結晶を、澄んだ水に落とす。甘酸っぱく、すがすがしい香りがひろがり、それを一口ふくむと、口の中で冷たい玉がはじけるような…。アルコールにとりつかれた男・小島容が往き来する、幻覚の世界と妙に覚めた日常そして周囲の個性的な人々を描いた傑作長篇小説。

 

受賞:本所深川ふしぎ草紙

著者:宮部みゆき
出版社:新人物往来社

近江屋藤兵衛が殺された。下手人は藤兵衛と折り合いの悪かった娘のお美津だという噂が流れたが……。幼い頃お美津に受けた恩義を忘れず、ほのかな思いを抱き続けた職人がことの真相を探る「片葉の芦」。お嬢さんの恋愛成就の願掛けに丑三つ参りを命ぜられた奉公人の娘おりんの出会った怪異の顛末「送り提灯」など深川七不思議を題材に下町人情の世界を描く7編。宮部ワールド時代小説篇。

 

第12回-1991年

受賞:乳房

著者:伊集院静
出版社:講談社

妻と病室の窓から眺めた満月、行方不明の弟を探しに漕ぎ出た海で見た無数のくらげ、高校生に成長した娘と再会して観た学生野球……せつなく心に残る光景と時間が清冽な文章で刻み込まれた小説集。表題作の他「くらげ」「残塁」「桃の宵橋」「クレープ」と名篇を収録し、話題を呼んだ直木賞作家の、魂の記念碑。

 

受賞:新宿鮫

著者:大沢在昌
出版社:光文社

ただ独りで音もなく犯罪者に食らいつく―。「新宿鮫」と怖れられる新宿署刑事・鮫島。歌舞伎町を中心に、警官が連続して射殺された。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追う。突き止めた工房には、巧妙な罠が鮫島を待ち受けていた!絶体絶命の危機を救うのは…。超人気シリーズの輝ける第一作が新装版で登場!!長編刑事小説。

 

第11回-1990年

受賞:土俵を走る殺意

著者:小杉健治
出版社:新潮社

大関大龍が横綱推挙を断る!!前代未聞の出来事の裏側にどんな事情が!?本場所千秋楽、好敵手である富士穂鷹との取り組みでの不可解な無気力相撲。両国・回向院で発見された初老の男の死体。高度経済成長時代に起こった誘拐事件。集団就職に隠された闇…。複雑に絡みあういくつもの謎から、真相が炙り出される。吉川英治文学新人賞受賞、社会派ミステリーの傑作。

 

第10回-1989年

受賞:犬の系譜

著者:椎名誠
出版社:講談社

姉が大妻女子大に合格し、兄の享一が高校1年になり、わたしが小学6年になったばかりの春に突然父が死にました。父の死、兄の狂い。家族の転変と犬を描く自伝的物語。

 

受賞:99%の誘拐

著者:岡嶋二人
出版社:徳間書店

末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには8年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして12年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。

 

第9回-1988年

受賞:国語入試問題必勝法

著者:清水義範
出版社:講談社

ピントが外れている文章こそ正解! 問題を読まないでも答はわかる!? 国語が苦手な受験生に家庭教師が伝授する解答術は意表を突く秘技。国語教育と受験技術に対する鋭い諷刺を優しい心で包み、知的な爆笑を引き起こすアイデアにあふれたとてつもない小説集。

 

第8回-1987年

受賞:虎口からの脱出

著者:景山民夫
出版社:新潮社

時の昭和3年、所は奉天。一瞬の爆風とともに、張作霖暗殺さる。唯一の目撃者である少女、麗華を追って、関東軍が立ち上がる。奉天軍、そして国民党軍も動きはじめた…。上海まで1600キロ、期限は3日。日中全軍を敵にまわして、デューセンバーグが中国の大地をひた走る。脱出なるか?日本冒険小説の金字塔、ついに文庫化。日本冒険小説協会新人賞、吉川英治文学新人賞受賞作。

 

第7回-1986年

受賞:総門谷

著者:高橋克彦
出版社:講談社

岩手県で1年間にわたり、UFOの目撃者が続出、そして奇怪な焼死体さえも! だが、このUFO騒動の裏は? 疑惑を抱く超能力者霧神顕たちは、怖るべきパワーの魔手と闘い、傷つきながらも、ついに魔の本拠・総門谷に潜入した。そこで目にした驚愕の光景とは? 構想15年を費したSF伝奇超大作。

 

第6回-1985年

受賞:山猫の夏

著者:船戸与一
出版社:講談社

舞台はブラジル東北部の町エクルウ。この町では、アンドラーデ家とビーステルフェルト家が、互いに反目し合い、抗争を繰り返している。ある日、アンドラーデ家の息子・フェルナンとビーステルフェルト家の娘・カロリーナが、駆け落ちする。その捜索を依頼された謎の日本人・山猫。ブラジル版ロミオとジュリエットに端を発した、山猫による血で血を洗う追跡劇が始まる。冷酷非道な山猫の正体と思惑、そして結末に明らかにされる衝撃の事実とは…?冒険小説の第一人者が描く、手に汗握る怒涛のストーリー。

 

第5回-1984年

受賞:宵待草夜情

著者:連城三紀彦
出版社:新潮社

大正九年の東京。祭りの夜に、カフェ「入船亭」の女給・照代が殺された。着物を血に染めて店を出てきたのは、同じ店で働く鈴子。鈴子の恋人・古宮は、彼女が殺したのかと考えるが。はかない男女の哀歓を描き、驚きの結末を迎える表題作ほか五篇。人の心の底知れぬ謎、深く秘められた情念から、予想をはるかに超える真実が立ち上がる。

 

受賞:プライベート・ライブ

著者:山口洋子
出版社:講談社

奇矯な行動で知られるスターと結婚した女優の平晶子は、新婚早々から夫の奔放なふるまいに悩まされる。不貞、暴力、麻薬……。失望し、愛想づかしをはじめるのだが、一方で、世間に対して、妻の姿を演技してみせる自分自身に、いつしか酔ってゆく―。特異な男女関係のあやを濃厚に描く文芸秀作集。

 

第4回-1983年

受賞:球は転々宇宙間

著者:赤瀬川隼
出版社:文藝春秋

続々と新球団誕生! ようこそ近未来のプロ野球に。日本の球界は3リーグ18チームの輝かしい“地方の時代”を迎えていた。走者一掃の三塁打的あと味爽やか空想小説。

 

受賞:眠りなき夜

著者:北方謙三
出版社:集英社

やられたまま引きさがる男だとは思われたくない!同僚が殺人容疑の罠にハメられ、死んだ。大臣候補の黒い影。弁護士・谷の熱い血が目覚める。第4回吉川英治文学新人賞受賞作。

 

第3回-1982年

受賞:陸奥甲冑記

著者:澤田ふじ子
出版社:講談社

桓武王朝期、統一国家への道を急ぐ天皇は、蝦夷征伐の勅を坂上田村麻呂に下した。部族の独立を守るために迎え撃つのは陸奥国の盟主・阿弖流為。知勇を尽くした長い戦いが始まったが、田村麻呂の慈悲深い同化政策の前に、戦いはしだいにその様相を変えてゆく…。歴史の闇に葬られた民に光をあてた長編小説。

 

受賞:寂野

著者:澤田ふじ子
出版社:講談社

吉岡流剣法の祖で、憲法染めを考案した吉岡憲法亡き後、嫡男清十郎、弟伝七郎、妹のうが道場と黒染屋を継いだ。そんな折、宮本武蔵が清十郎に挑戦、京・蓮台寺野での果し合いの末、清十郎を討った。三十三間堂で武蔵に挑んだ伝七郎も返り討ちにあう。のうの許婚・長野十蔵は吉岡家の後見人・壬生源左衛門が病床にあることを利用し奸計を謀ろうとするが、のうの武蔵への思慕が募る…。女の情念を描いた佳品集。

 

第2回-1981年

受賞:絃の聖域

著者:栗本薫
出版社:講談社

長唄の人間国宝の家元、安東家の邸内で女弟子が殺された。芸事に生きる親子、妾、師弟らが、三弦が響き愛憎渦巻くなかで同居している閉ざされた旧家。家庭教師に通っている青年、伊集院大介の前で繰り広げられる陰謀そして惨劇。その真相とは!? 名探偵の誕生を高らかに告げた、栗本薫ミステリーの代表作!

 

受賞:闇と影の百年戦争

著者:南原幹雄
出版社:集英社

天保期、薩摩藩士・志布志平太は、藩主・島津斉興から「豪商・大丸屋呉服店を探索せよ」との密命を受けた。大丸屋に関わりのある者が藩内に潜入を試みているらしい。八代将軍吉宗の庇護を受けて京に本拠をもち、江戸、大坂は勿論、全国に商圏を広げた大丸屋は、その勢力を薩摩藩まで伸ばそうとしていた。江戸へ上り、探索を開始した平太だが、貯木場に忍び込んだところを襲われる。敵は大丸屋の私兵組織だ…。

 

第1回-1980年

受賞:涸瀧

著者:加堂秀三
出版社:文藝春秋

林義信は大阪府の山村生まれ。父・義次郎は、農業に失敗し、厄介者扱い同様で養鶏場に住み込んでいる。母の君江は若い男と出奔したまま行方不明。義信は、土地での生活を嫌い、役者・俳優への夢を抱いて、上京する。俳優養成所で知り合った平泉基子と同棲、愛欲に束の間の安らぎを求めるが、やがて俳優への道を失う。義信は地道な暮らしをめざし、父親を呼び寄せて、基子との三人暮らしを始めたのだが―。

 

受賞:黄金の罠

著者:田中光二
出版社:祥伝社

 

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文学賞

Posted by 綾糸